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2019年11月14日 (木)

国防よりも、今こそ被災者支援、減災のための防災を優先するのが政府の責務だろう

(写真はクリックすると拡大します)

世間は「桜を見る会」のスキャンダルで大騒ぎだ。野党から突っ込まれ、「来年の「桜を見る会」は私の判断で中止しました」と責任逃れをしようとした安倍晋三(首相)は、戦後から長きにわたって続く恒例の政府公式行事を一存で中止する判断こそが、「桜を見る会」の私物化だと証明することがわからない政治家だ。とても国会議員の資格があるとはいえない。

 

それはさておき、台風19号から一ヵ月が過ぎた。当事者の被災者ににとっては現在進行形で忘れることはできないが、直接の被災者とならなかった者が忘れたくても忘れていけないこともある。幸運にも当事者とならなかったことに感謝しながら、台風19号による被害の現実を取材した記録と記憶を共有しておきたい。

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長野市の千曲川決壊による水没地域は、津波が通り過ぎたように見えるほど、幹線道路沿いでは自動車がひっくり返ったり流されたりしている光景が濁流の脅威を物語っていた。10月14日撮影。

 

_yyy1558sumiweb堤防決壊場所から遠くない津野地区は、被害の発生から一ヵ月が過ぎても凄惨な現場そのものだった。津波被災地と同レベルの被害だと痛感。豪雨による大河の堤防からの越水と決壊は、津波が被害を引き起こす仕組みと何ら変わらないという水害のとらえ方が欠かせないと思うようになった。11月17日撮影。

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同じく長野市の広範囲に水没した地域に軒を並べるリンゴ園は秋の収穫を目前にしながら深く水没していた。10月14日撮影

 

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長野県佐久市中込の千曲川の支流が本流と合流する直前で堤防が決壊し、水田40枚超が砂に埋まり、河原の砂利を敷き詰めたような状態だった。米は未収穫の水田ばかりだった。10月23日撮影。長野県佐久市中込、

 

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  福島県須賀川市前田川地区を流れる阿武隈川の越水氾濫により水没した果樹園地帯。写真は桃園。濁流により木は折れたり流されたりしている。11月3日撮影。

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「こんなひどい被害は88年生きてるきたが初めてだ」福島県須賀川市前田川で、梨やリンゴや柿などの果樹を幅広く栽培し、長男が跡を継いで専業農家として頑張ってきた鈴木昭一さんは言った。

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同須賀川市前田川地区の阿武隈川沿いに広がる果樹園地帯のリンゴ園。水没したリンゴや枝には上流域から流されてきた稲わらが厚くまとわりついていた。未収穫の稲穂も混在している。須賀川市も福島県内では果樹栽培が盛んな農村地帯だ。11月3日撮影」

 

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福島県本宮市の台風19号により被災した住民が廃棄した、通称「災害ゴミ」。昨日まで住民の生活の一部として愛用されてきた身の回りの品物を「災害ゴミ」と呼ぶには無理があるだろう。東日本大震災や熊本大震災の現場を思い出させる光景は悲しみと無念さが詰まっている。11月4日撮影。

 

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これから冬を迎えるのに、大量のストーブが廃棄処分となっていた。(同本宮市の集積所)11月4日撮影。

 

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福島県郡山市田村町徳定の床上浸水のため、ピアノを含めほとんどの家財道具を廃棄せざるをえなかった石塚さん(50代)。泥出しは16~17人のボランティアさんたちにより二日間でかきだしてもらったという。年老いた両親と、夫と長男の5人が暮らしていた二階建ての自宅の一階部分は空っぽとなり、日常生活を送る状態ではない。 11月4日撮影。

 

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日没後の石塚さんの家も周辺も住民の避難生活が続くために灯りはない。市が回収するという廃棄処分のピアノが家の前に出されている。11月4日撮影。

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台風19号による15都県の主な被害を示した信濃毎日新聞記事(11月10日)。被害が長野県だけ突出しているわけではないことがよくわかる。主な被害内容は、死者行方不明者は95人。住宅の全半壊が11685棟。住宅の床上床下浸水が64300棟。堤防の決壊が71河川140ヵ所に及ぶ。

11月12日のNHKニュースによると、台風19号とその後の大雨による農林水産関係の被害額は2500億円を超え、9月の台風15号による被害額と合わせると3000億円を上回って」いる。「コメやりんごなど農作物の被害は1万8900ヘクタールに及び、被害額は135億円」とのことだ。

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長野県の被害総額は2318億円(信濃毎日新聞11月12日)

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行方不明者の捜索活動が続けられていた。(長野市赤沼地区、10月14日)

 

こうした15都県に及ぶほどの激甚災害に対し、政府が10月16日に決定したのは、「今年度予算の予備費から7億694万円を支出する」だ。福島県郡山市の自宅浸水した被災者はこの金額にあきれはてていた。

 さらに時事通信によると、「政府は11月8日、台風15号と19号などによる被災地の再建支援として、2019年度予算で計上した予備費のうち1316億円の支出を閣議決定した」。被災者の生活と生業再建にむけた「対策パッケージ」に基づき、中小企業支援(501億円)、農業支援(151億円)などが柱だという。

 

Dsc_1099sumiweb深さ2m以上の浸水のため、リンゴは廃棄処分される。リンゴ農家が廃棄するために落としたリンゴは、被災したリンゴ農家のやるせない気持ちを代弁しているように感じるのは、私だけではないだろう。

 

1300億円程度で膨大な被災者の何を支援するつもりだろうか?自宅再建資金か?農地復活支援か?工場に欠かせない精密機械の購入か?農林水産業関係だけの被害だけでも3000億円を超し、長野県の被害総額にも満たない。被災者を愚弄する子ども騙しか?それもと、安倍晋三(首相)率いる自民公明(僧が学会)与党は、被害の深刻さをいまだに認識できないでいるということか?

 

安倍自民党公明党(創価学会)政権となってからは、防衛予算は急増する一方で2019年度は総額5兆2574億円となった。安倍・トランプ会談で安倍晋三(首相)はトランプから最新鋭戦闘機F35を105機、爆買いすることを約束したことはよく知られている。1機100億円以上。安くみても1兆2000億円だといわれる。

 

閣議決定した1300億円の台風や強風被害への政府支援額は、戦闘機13機分。50機分の購入を止めれば、6000億円ほどを被災者支援に割り当てることは簡単至極だ。戦闘機1機分のお金で90の認可型保育所を新設できるという試算もある。 要するに政府の意思の問題だ。国民生活の安定を優先する気持ちが少しでもあるならば、戦闘機の購入を止めて、被災者支援、減災のための防災用に貴重な税金を使います、という当たり前の配慮があれば、優先順位は判断できることだ。

 

郡山市の被災者、石塚さんはこうつぶやいた。「気候変動が起きていて、いままでは大丈夫だったけどもうダメですよね。踏みとどまって防衛費を減らして防災に優先して、自衛隊を編成しなおして、災害救助隊のように防災とかに特化してほしい。鉄砲なんか持たなくていいから。歓迎しますよ。(災害救助隊は)ありがたいと」

 

税金を国防費に浪費するよりも、気候変動により毎年必ず起きる自然災害(人災要素の高いものも含め)の減災のための防災と被災者支援こそが、政府=国が、県が、市町村が今こそ最優先すべき課題なのは明らかだ。 

 

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