負け犬、法律無視の暴言(宗補雑記帳からの復活ブログ)
2010年3月31日 負け犬、法律無視の暴言
先日の松江で不思議な体験をした。大阪大空襲により大火傷を負った二人の取材をしてから1週間後だった。大阪での取材中は、手塚治虫や小田実の反戦の原点は大阪大空襲だったことを思い出していた。
松江で中支に派遣され、シベリア抑留、撫順戦犯管理所を経て帰還した難波靖直さんのインタビューを終え、一休みしようと松江駅近くのデパート内にある外資系のコーヒーショップに入った。常々ボイコットしている外資系の店だったら入らないが、そうではないチェーン店だった。コーヒーを注文して待つ間、10数冊の本や新聞が置かれた小さな本棚があるのに気づき、何となしに見ていると手塚治虫ものがあった。「いのちとこころの教科書」(イーストプレス)という本で、手塚マンガを編集した学校の参考書的な本だった。かつては大のマンガ好きで、手塚治虫はマンガ家の枠をこえたものすごい作家だと思っている。大長編の「火の鳥」はCOMというマニア向けのマンガ雑誌で読んでいた。「ブラック・ジャック」「ブッダ」「アドルフに告ぐ」も好きだ。
驚いたのは、この本に手塚自身の大阪大空襲の体験を元にした「紙の砦」というマンガが掲載されていたことだった。コーヒーを飲むのも忘れて読んだ。取材した二人の空襲体験が手塚マンガによって映像化されたようだった。手塚の大阪大空襲体験がどんなマンガだったか確認したいと思っていたところに、この偶然の出会いは不思議としかいいようがなかった。一度は見たことのあるマンガだが、タイトルは覚えていなかった。妙縁としかいいようがなかった。
昨日はBS11デジタル放送番組用の収録があった。放送予定は4月14日(水)夜10時42分から8分間。「INSIDE ASIA」という番組で、佐々井師の日本行脚写真集と活動を紹介する。写真は20数点紹介してくれるが、キャスター役の野中章弘氏との掛け合い8分なので、要点のみの説明だけで終わった。
さて、ここからがいちばん言いたいことで、国松警察庁長官狙撃事件が時効になったことと、警視庁の青木五郎公安部長による、事件は「オウム真理教のテロ」であると断定する捜査結果を公表したというびっくり仰天ニュースについてだ。時効ということは、「犯人を捕まえることができなかった」という冷厳な事実以外の何ものでもない。容疑者として特定されても、実行犯、共犯者と断定できる証拠がなかったから事件が時効になった。それだけのことだろう。それを、「犯人は捕まえられませんでしたが、犯行グループはオウム真理教と断定します」と発表しているのが警視庁だ。捜査結果の概要でも「疑わしい」しているだけで断定できていない。にも関わらず矛盾した発表が恥ずかしげもなくされていいのだろうか。負け惜しみというよりも、法律を無視した「負け犬の遠吠え」。警視庁だけは法治国家の裁判制度を無視することが許されていると暴言を吐いているようなもの。オウム真理教、とりわけ「教祖」と個人崇拝されながら、欲望の固まりとしか思えない松本智津夫が大嫌いなので、オウム真理教を守ろうとしているつもりはない。
今回の前例が今後まかり通れば、警視庁や公安警察が、気に入らない個人や組織、政治家や政党であっても、証拠もなく「犯人」と名指し、マイナスイメージをかぶせて社会から抹殺することが許されることになりかねない恐ろしさがある。戦時中の軍国主義下の特高警察に近づいているのか。いまの時代でいえば、軍政下ビルマの秘密警察と似たようなものになりつつあるということかもしれない。
この15年間、のべ48万人が捜査に投入されたという。威信をかけた捜査がほんとうに行われてきたのだろうか。個人的な体験になるが、昨年11月、私自身が警視庁特別捜査本部の警部補から、国松長官狙撃事件の共犯者に関係する情報を教えてくれないかと、唐突に携帯に電話があった。私がビルマ少数民族のカレン民族解放闘争に詳しいからというのが理由だった。時期的には、時効まで6ヶ月を切ったという新聞報道が各紙に掲載されて少し後になるころだ。
後日、捜査員2名と四谷のファミレスで合って1時間ばかり話した。年配の警部補と若い巡査部長だった。時効間際になって、なぜ何の情報を知ろうとしているのか尋ねると、狙撃犯には小柄で年配の共犯者がいたという有力な情報があったので、共犯者の手がかりを集めているという。共犯者とおぼしき人物が、ビルマ山中で反政府ゲリラであるカレン民族解放戦線の「傭兵」として戦った経験があり、狙撃の腕が高いと見られているという。
捜査員の話しぶりで、彼らがインターネット検索で収集できる情報さえも認識していないと思われたので、カレン民族解放闘争とビルマ軍政に関して30分ほどレクチャーさせてもらった。傭兵とは金で雇われた兵隊のことだが、カレン民族が外国人兵士を雇えるほど財政的な余裕がないため、「義勇兵は存在したが傭兵はいなかった」ことや、ビルマ山中の行軍の困難さを解説した。カレン民族に関わる日本人は取材者であれ、義勇兵であれ、インターネット検索でほとんど特定できるはずだが、二人は最低限の情報すら知らなかった印象を受けた。14年前に出版した拙著「ビルマの大いなる幻影」さえも読んでいなかった。
はっきりいって、不勉強であり本気で情報を集めているのかが疑問に思えた。本気ならば、タイ・ビルマ国境の現地へ飛んで情報収集することが最善だ。誰に会ったら良いですかと尋ねられれば、紹介しても何の問題もなかった。捜査員にはその気もないようだった。警部補が最後に取り出したのが似顔絵だった。「この人物に会ったことはありませんか」。義勇兵たちとほとんどつき合いのない私には知らない顔だった。捜査員と別れたとき、懸命に捜査をしているというアリバイ作りに動いているだけなのかもしれないというのが私の実感だった。ファミレスに二人の捜査員を残して先に退出したが、おそらく彼らはコップなどから私の指紋を取っただろう。
後日、全国紙の記者経験のある友人にこの話をすると、「山本さんは容疑者の一人なんだよ」とからかわれた。
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