3月は「旅立ち」の月なのか?(宗補雑記帳からの復活ブログ)
3月22日 3月は「旅立ち」の月なのか?
楽風での写真展が無事終了し、少し気が抜けた。天候不順のためか、前半はまばらだったが、ラストの三日間はポカポカ陽気に誘われ駆け込み的にたくさんの人が観に来てくれた。さいたま市浦和という決してアクセスが良いところとはいえない会場にわざわざ駆けつけてくれたみなさんには心から感謝したい。
二週間の写真展はけっこう疲れる。終わった翌日は蓄積された疲労のためかへとへとだ。四捨五入すれば60歳。単純に体力が落ちただけかもしれないが、長期の写真展はやはり疲れるものなのだ。用意周到に準備しても何か忘れていたり、展示が完了しても何かが抜けていたりする。遠路来てくれる人には申し訳ないと思うと、できる限り詰めていることになる。
全紙全倍合わせて65点を展示した。図面上の計算では50点の展示で窮屈かと想定していたが、楽風の空間は広く、展示のしがいがあることを改めて実感した。一階の喫茶スペースから二階のギャラリースペースに上がる階段と廊下も、照明は暗いがオシャレな展示空間に活用できた。
それにしても畳敷き土壁の壁面はお年寄りのモノクロ写真にピッタリだ。理想的には写真展も楽風のような有機的なスペースでいつも開催できると良いのだが。築100年をこえてもまだまだ現役の建物が、写真のお年寄りを生き生きと蘇らせてくれているような気がする。
3月は「旅立ち」の月なのかと思う。なぜか身近で旅立つ人がこの月に集中する。今日は、19日に80歳で急逝したある大作家の葬儀に行って来た。家族と内輪だけの小人数が集まる、火葬場だけでのお別れ会だった。「無宗教」とのことで、僧侶も読経も戒名も何もない、実にさっぱりした葬儀だった。ご本人の性格や逝き方の反映ではないかと思った。新聞のお悔やみ欄に出れば、驚かれる人も多いに違いないが、ご遺族の意向でまだ公表されていない。いづれ明らかになるが、今日のところは名前を伏せておきたい。
実に気さくな方だった。愛煙家でほんとうにスパスパと吸っていた。中毒になっているのではと思ったほどだ。初めてお会いした時の印象がそうだった。先生の著書を読んでインドのことを教えてほしいと思って手紙を書き、会っていただいた。武蔵小金井駅に近い先生が行きつけの居酒屋で、サイン入りの貴重な本も二冊もらったと思う。すでに絶版になっている本で、その後は出版社の担当編集者の熱意で新書版で刊行され手に入りやすくなったが。早くもあれから5年が過ぎたと思うと、たった一冊の本との出会いの妙縁というか因縁に不思議な巡り会わせを感じる。
先生とはとりわけ親しくさせていただいたというわけではない。ただ、先生に頼まれた雑誌やビタミン剤をインドで購入してお渡ししたり、先生の行きつけのレストランで、先生をよく知る友人知人を交えて何度かごちそうしていただいた。2年前にはインドでも先生とある大人物が対談される場に同席し、写真を撮らせてもらったこともある。大病されて危ない時もあり、その時は三鷹の大学病院にお見舞いにいった。最近では、1月末にインド関係者と出版社の担当者だけとご自宅に近い喫茶店で楽しく雑談したのが最後となった。葉巻が似合う人だった。
火葬前の棺には、先生の代表的な著書二冊と真っ新な原稿用紙が収められ、先生の肉体と共に旅立った。
コンビを組んで「老いの風景」を取材した親友のジャーナリスト、須田治さんが急逝したのは6年前の3月19日だった。7年前には実兄が病死し、5年前には義父が亡くなった。二人とも3月だった。季節の大きな変わり目は向こうの世界からの吸引力が強いのかもしれない。
明日からはビルマ・タイ国境の取材に出かける。正味8日間の取材行だ。
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