2004年3月2日:インドの日本人僧、佐々井秀嶺上人の取材に出かけます(宗補雑記帳よりの復活ブログ)
先週、山際素男先生にお会いした。初対面だったがゆっくりとしたペースで、数時間にわたって居酒屋でお話を伺った。とっても楽しい時間だった。私が最終のバスに乗るために失礼する頃には、20本くらいの吸い殻で山際先生の灰皿はあふれていた。あまりに多くの事を短時間に際限のある脳味噌に詰めようとしたが、帰る頃には頭が破裂しそうなほど刺激が強く、かつおもしろいお話だった。
山際先生といえば名著の「不可触民」がある。インドのヒンドゥー教社会のカースト制度で、最底辺に位置し様々な職業についているが上位カーストからは人間扱いされない人たちのことだ。ダライラマ自伝などの翻訳も多数あるインド研究者であり作家だ。近著では「不可触民と現代インド」(光文社新書)がある。
3年前には444ページという分厚い「破天 一億の魂を掴んだ男」(南風社)本を出され、インドに渡って30数年、インド仏教徒のリーダーとして仏教復興のために闘い続ける破天荒な日本人僧、佐々井秀嶺上人の生涯を書かれている。数百万人、数千万人のヒンドゥー教徒が仏教に改宗しているのは、この日本人僧の力によるというのだ。想像を絶する活躍ぶりで、これが革命的でないとしたらどう表現すればいいのだろう。とにかく、インド人さえできないようなとんでもないことを実現しているのが佐々井上人という印象だ。
山際先生は、「まだ生きているのに自伝を書いてしまった。彼の結末をそろそろ考えておかなければ」などと冗談ぽい話をしていた。
山際先生の著作や話を聞き、これは佐々井秀嶺上人にお会いする他はない、取材する他はないという気持ちになり、私は3日からインドに出かけることにした。約1ヶ月の滞在予定だ。不可触民からインド憲法の草案を書き、独立インドの初代法務大臣を務め、あの非暴力と平和主義で知られているガンジーとまっこうから対立したというアンベードカル博士がインド社会に与えた影響についても探ってきたいという魂胆もある。山際先生はダナン・ジャイ・キール著の「不可触民の父 アンベードカルの生涯」(三一書房)を翻訳されていて、アンベードカル博士の業績を日本人に様々な方法で紹介しようとしてきた唯一のインド研究者のようだ。
正直なところ、私はアンベードカル博士の名前は山際先生の本を読んで初めて知った。それまではガンジーの非暴力主義や平和主義のことをもっと知らなければいけないと少々焦っていたところだ。この佐々井秀嶺師の実践してきたことはアンベードカル博士の遺志を引き継いでいることを意味しているという。佐々井師やアンベードカル博士のことを少しでも知った以上は、取材してくるしかない。現実はどうなのかをこの目でできるだけ見てくるしかない。
若輩者に親切にいろいろ教えてくれた山際先生のご期待にそえるかどうかはわからないが。
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