2001年11月:パキスタン・ペシャワールから~宮内勝典海亀通信掲示板書き込み(宗補雑記帳よりの復活ブログ)
(注:この文章は尊敬しその作品が好きな作家宮内勝典さんのホームページ掲示板に2001年に書き込んだものです)
前回、パレスチナの実状を書き込んだエルサレムを24日に離れ、26日からはパキスタンのペシャワールに来ています。ラマダン(断食月)はパレスチナ取材中から始まり、似非イスラム教徒として、朝食後から日没までは水も飲まず、タバコも吸わず、何も食べないで我慢する努力をしているところです。とは言っても、実状は朝食は7時くらいに食べ、さらにこっそりチョコレートやビスケットなどを時折食べたり、水を飲んだりしてしまうので、とてもラマダンを実行しているわけではないのですが。
アフガン人があふれるペシャワールの宿は、コックやウエイターは全員アフガン人。パシュトゥーン人、タジク人で、経営者はかなり前からペシャワールに出てきたアフガン人。日没直後の食事は、ホテルの食堂にある大テーブルをマネージャーから警備も含めた使用人全員が集まり、モスクから流れるアザーンを合図に、待ってましたとばかりに食べ始めます。今日は金曜日、私も夕食に呼ばれ、みんなと一緒にミルクティー、ポテトのピリ唐揚げ、ナン、果物などをいただきました。今日は朝食後はティーを一杯、それにジュースを一口だけで何とか夕方まで我慢しましたが、どうも私はイスラム教徒にはなれません。
パレスチナでは豪華なラマダンスペシャルの家庭料理を一度ごちそうになりましたが、ここのアフガン人は果たしてどんな夕食を家族で食べているのかが気になるところです。ついでに、この宿で働くアフガン人の給料は1500ルピー以下。100ドルが6000ルピーの交換レートなので、25ドル以下です。
27日からはペシャワール会の活動と中村哲医師の取材撮影に取り組んでいます。中村先生は27日から12月3日までが、こちらのPMS病院に詰めながら、アフガン領内での援助活動の指揮をとり計画を練り、残りは日本での講演活動の日々を交互に繰り返すパターンができています。火曜日は疲れと睡眠不足がありありの表情で、言葉にも力がありませんでしたが、今日はかなり元気が回復した表情と雰囲気が感じられました。
今朝ほど、ジャララバード北部のマラリア流行地域に向け、マラリア用の薬や寝袋などを積んだ車2台でアフガン人スタッフを送り出したところです。緊急食料援助活動は、ジャララバードとその周辺の治安が不安定なため、一時休止状態。通常の医療活動は続いているという話です。カーブルには国連機関などから大量の食料が運び入れられはじめたために、今後の食料援助は大きな援助機関の活動範囲外の地域に力を入れることになるようです。
今日はようやく中村先生の医師としての現場をしっかりと病院で見せてもらいました。患者一人一人との対話と欠かさず、担当医師の所見なども確認しながら、ゆっくりと時間をかけて見て回る姿は、日本からここまで中村先生の現場の一部を見に来たかいがあることを実感させてくれました。中村先生よりも頭の位置が低いのはベッドの患者さんだけで、アフガン人とパキスタン人医師陣は小柄な中村先生を見下ろして、中村院長の説明に耳を傾けているのです。
著書で想像した個性の強い人物を時折確認しつつ取材しています。ちなみに、タバコ好きの中村先生は、ラマダン中に外では絶対に吸わないそうですが、院長室はラマダンの時期でも影響されない部屋とされ、ミーティングや人に会う合間にタバコが欠かせないようです。
私は帰国まで10日を切りましたが、ジャララバードとカーブル間の治安が安定すれば、アフガン領内を是非見てこようとは考えています。
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