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2017年12月の投稿

2017年12月19日 (火)

郡山市の米農家、中村和夫さんの急逝を悼む

(写真はクリックすると拡大します)

Jpgweb(2011年9月の「第1回 さようなら原発」集会にて)

 反原発集会でのムシロの幟がシンボルだった米農家の中村和夫さん(68)が、今年4月下旬、脳溢血で突然旅立ってしまった。2014年に直接取材しはじめる前から偶然の積み重ねで、原発事故が起きた年から中村さんを何度か撮影し、その後に中村さんの本業の現場を度々取材した者として、中村さんの死を悼み、その人となりを知ってもらうためにもブログ記事として残しておきたい。

 中村さんの急逝を知るのが遅すぎたことを深く反省したい。


Jpgweb(同じく2011年「第1回さようなら原発」集会にて)

 以下に引用するのはWeb毎日スポニチTAP-iに掲載した記事です。3年前に書いた記事ですが、中村さんの人物像が浮かび上がると思うので再録しておきたい。
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風評被害に抗う米農家・中村和夫     写真・文 山本宗補

 日本中のメディアが東京五輪招致を歓迎する報道しかせず、福島県民の五輪反対の声は封殺されている。

 「首相があれほどウソこき恥こき言って誘致してる。言語道断だ。福島県人を愚弄している。人の命と五輪とどっちが大事だ。五輪はご破算だとIOCに直訴したい」

2jpgsumijpgweb(有機マ米用の田んぼの前で、オリンピック誘致に反対の意志表示、2014年5月)


4jpgweb(カリウム肥料を散布。2014年5月)


_aaa3625jpgjpgweb(後継者の息子さんと田植え、2015年5月)

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 福島第一原発から西に70キロ。郡山市逢瀬町の専業農家の中村和夫さん(66)は、歯に衣着せぬストレートさで政府とメディアを批判した。

「福島県人からすると、世の中この重大な事故を忘れているのではないか。1号機から3号機までのメルトダウンに手も足も出ない。除染しても根っ子を止めないと話にならない。不安だらけだ。再稼働なんてあったもんじゃない」

 中村さんが原発事故に対して抗議し始めたのは、事故年4月26日の東電本店前の抗議以来だという。同年9月、大江健三郎さんらが呼びかけた第一回の「さようなら原発」集会に参加した。その時は、畳大ほどのムシロに、「放射能汚染下での生活 もう我慢できね 原発のバカヤロー」と大書した。6万人の参加者の中で最も目立ったのが中村さんの幟だった。東電旧経営陣らを刑事告訴した福島原発告訴団の一員として、中村さんは告訴団の抗議行動に必ず参加し、叫び声を上げてきた。


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(東京地裁前の抗議行動に参加。2013年2月)


 逢瀬町は、東西10数㌔に及ぶ郡山盆地西端に位置し、奥羽山脈水系からの豊かな農業用水があり、緩やかな傾斜が広がる農村。「この辺は粘土質で米以外は向かない」と中村さんは言う。米は7ヘクタール、野菜作りも手広い。いつも甲斐甲斐しく働く奥さんの喜代さん(61)と、後継者となった長男直己さん(36)の3人の家族経営だ。農繁期は援農者もある。

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7jpgweb(直売所に出す野菜に値札をつける喜代さん、2014年7月)


_aaa2799jpgsumijpgweb出荷するインゲンの収穫に忙しい和夫さん。


 今年の米価は暴落した。しかし、中村さんは採算ギリギリの販売価格を変えることはしない。消費者と直に繋がっているのが強みだ。原発事故前から産直で米の全量を個人消費者や生協などに販売。農協を通さないのは、猫の目のようにくるくる変わる農政に対する憤りがある。国の減反政策に大冷害のあった1993年まで100%協力した。ところが、国は米不足対策で一時的に米を輸入したが、ミニマムアクセス米としてその後も輸入を続け、食糧管理法が廃止された。国は輸入米を買い続け、農民には生産調整を求めた。農協に協力してきた思いは裏切られ、信用できなくなったのだ。

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 農村と都市との交流を考え、逢瀬町と湖南町の農家11件で取り組む農家民宿を9年前に開始。農家3件で郡山環境保全農業研究会を立ち上げ、化学肥料や化学合成農薬を一切使用しない「JAS」認定を受けた有機米作りにも励む。野菜は20人の農家が共同出資した直売所「ポケットファームおおせ」で販売し、郡山市内のイトーヨーカ堂にも卸す。直売所にはとうもろこし、トマト、きゅーり、かぼちゃなど、多種多彩の野菜が並ぶ。

 放射能の影響は少なからずあった。事故後の水田の土壌調査では3000ベクレル/kgあった。セシウム流出防止剤のゼオライトの散布量は加減し、水田によっては深耕もした。事故年に8ベクレルあった米だが、昨年は1.5ベクレルに減少。セシウム吸収抑制剤としてカリウム肥料を散布。今年はさらに減った。検出限界値は20ベクレル/kgなので事故年からND(不検出)が続くが、風評被害は覆せない。首都圏から農家民宿の参加者はいなくなった。震災前からのつきあいのある都会での出張販売にも影を落とす。

_aaa4137jpgjpgweb玄米の全袋放射能検査のために運んできた中村さん、2015年10月)

12jpgweb(お茶の水のイベント会場で米や野菜の直売、2014年10月)

「風評被害は払拭できていない。県の全袋検査で安全が確認されても、直売所の米の販売は、事故後は半分以下となり今も低迷している。地元の人でも嫌っている」

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関西の大学生らが中村さんの話を聞きに訪ねてきた、2014年3月)
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 希望が見えるのは学生たちとの農業体験を通じた交流だ。原発事故前に始まった文京学院大(埼玉県ふじみ野市)の学生たちは逢瀬町に通っている。今年10月の大学祭に、中村さんが野菜をトラックで運び入れ、学生たちが販売協力した。

「親戚の家に行くような感じ。学生たちにとっては第二の故郷です」(何度となく中村さん宅に農業の手伝いで泊り込んだ卒業生の星野麗音(れおん)さん)。来年からは日本女子大の学生との交流も始まるという。

 中村さんの新米の袋には自筆の感謝のことばが添えられている。
「震災から3年余、今だに福島県の農産物を敬遠されている中、あえて私どものお米、野菜を食べていただき御礼と感謝申し上げます」
 
 そこには、都会の消費者に最も理解してほしいメッセージがある。

「単に安いか高いかの物指しばかりでなく、農家が農地を守ることによって生物を守り、自然環境を守っていることも考えてください」

(毎日スポニチTAP-i 連載第五回 2014年12月掲載)

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 ちなみに日本の農業を守り、食料安全保障の要ともなってきた「種子法」が安倍政権により来年3月で廃止されることに対し、和夫さんは「ダメだー、こりゃ!」と反対運動に参加する意思を見せていた。モンサントなどに代表される多国籍種子企業に日本農業が支配されるこ可能性が高まるからだ。良い種子の価格が不安定化し、農家の廃業に拍車がかかり、食料自給率が現在の37%から10%代にまで落ち込むことも懸念されている。

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 中村さんの米袋には、「中村さんちのお米」の文字とともに、大きな大きなオムスビを手に、いつも笑顔の和夫さんの似顔絵のイラストが印刷されている。

 中村さんが前兆もなく倒れたのは田植えを控える農繁期。種子法廃止反対の署名運動に動いたのは、突然の悲しみに向き合う余裕もなく農作業に追われた喜代さんだった。

 「お父さんがこれはやりたかっただろうということを、これからもやってあげられたらいいなあと思っている」

 その喜代さんによると、ある人が中村さんの突然の死に対し、「アクセルを踏みっぱなしで、ブレーキをかけ忘れたんじゃないか」とつぶやいたという。

 和夫さんの笑顔が印刷された米袋はこれからも使い続けていくと喜代さんは話した。中村和夫さんの急逝を悲しみ、中村和夫さんの実直な生き方が受け継がれ、花を咲かせ実を実らすことを念じて止みません。

                                           山本宗補  合掌

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