年越せば、まる6年となる福島県大熊町。富岡町の松村直登さんの近況も。
(写真はクリックすると拡大します)
大熊町新町のファミリーマート。年越せば丸6年になろうとしているのに、店内は3・11直後のまんま。
地震による被害だけならこの状態で残されることはありえないだろう。(注:撮影は全て11月25日~26日)
定点観測のように毎年一時帰宅に同行している大熊町の木幡ますみさんの一時帰宅に今年も同行した。facebookではすでに紹介済みだが、年内の内にブログにしておきたい。
◯木幡さんの自宅はイチエフの真西7キロにあり、帰還困難区域内。だが、自宅前を自由往来が許可されている国道288号線が走るため、避難解除された状況に近い。国道288号線は除染土などを運ぶダンプカーが行ったり来たりして、国道6号線よりも交通量が多い印象。それゆえか、空き巣に狙われやすいようだ。
居間の荒らされ方が尋常ではなかった。ドロボウと動物も走り回ったような散らかり方。
一番広い部屋で木幡さんが掲げて見せてくれたのが夫の仁さんの弟さんが高校生のときに描いた絵。若い頃は絵描きを目指したというが、半身不随になりかねない病気を克服したばかりだという。
居間にある扉が閉まったままの仏壇から、夫の母親の遺影を持ち出した木幡さん。なぜか仏壇は荒らされた形跡はなかった。
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庭先の空間線量は3マイクロシーベルト前後だった。線量は明らかに下げ止まりだ。
土蔵が何者かによって開けられ、重い金属製の扉が閉まらないようにつっかい棒がされていた。
敷地内にはイチョウの大木が二本ある。銀杏が落ちて腐り始めていた。放射能測定のために、銀杏を収集する木幡さん。
後日判明した銀杏の放射能汚染の結果は次の通り。
・イノシシが大好物?の銀杏の外皮:セシウムの合計861ベクレル(137が716、134が145。カリウム40が596ベクレル)。
人間が好物とする銀杏の実:セシウムの合計574ベクレル(137が485、134が89。カリウム40が504ベクレル)。
定点観測の場所に立ってもらっての写真。昨年までと比べると、坂道をふさぐ雑草や雑木が刈り払われている印象。木幡さんによると、同野上地区の住民の希望を東電が聞いたようで、住民サービスとして社員が家に通じる道や庭先などの雑草刈りに今年から開始したようだ。
◯木幡家の農地
国道288号線から枝分かれして大熊町町内に向かう道路端に立つ看板。「熊川海水浴場」の案内板が痛々しい。
この道路の両サイドは、木幡家の水田だったが、いまはセイタカアワダチソウとススキの荒野と化して久しい。道路端5ⅿほどの雑草が刈り取られている。
◯イチエフの周辺と中間貯蔵施設予定地の現状
(財)福島県栽培漁業協会のカマボコ屋根が見えるが、イチエフと隣接しているヒラメやアワビの養殖場。
当然のことだが、いつ来てもここは高線量だ。この建物の周辺で撮影したり測定したりして、30分少々いるだけで頭が重く感じる。
大津波により、養殖場の全ての建物は壊滅的被害を受けた。どれも、手付かずのまま放置されている。
養殖場裏手は太平洋が見渡す限り広がる。8.5マイクロシーベルト前後の空間線量を示した。
・カマボコ型の養殖場の脇に生い茂っていた野バラの蕾を木幡さんは収集し、放射能測定に出した。
その結果は以下の通りだった。
セシウムの合計が452ベクレル(137が370、134が82)。カリウム40は807ベクレル検出した。
運用されている中間貯蔵施設の一角。養殖場からは数百メートルしか離れていない元工業団地。放射線量が元々高い一帯だ。数値は10マイクロシーベルト近い。
津波により全壊した民家が手付かずで残されたままの熊川一帯も中間貯蔵施設予定地だが、現状は仮置き場として運用されているようだ。ダンプカーが頻繁に出入りしている。
3・11の地震大津波により大きな被害を受けた太平洋岸450キロ沿線の中で、全壊家屋がいまも放置されたままの場所は、おそらく大熊町のこの一帯だけではないだろうか。原発事故による放射能汚染の怖ろしさを象徴しているのではないだろうか。
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この新興住宅街も中間貯蔵施設予定地。各地権者の同意なしには、貯蔵施設のための整備も開始できないわけだから、一年後もこの住宅街はおそらくそのままだろうと推測する。放射線量は7マイクロシーベルト前後を指す。
地震に耐えても放射能に汚染され、もはや人が住むことが憚れる瀟洒な住宅。これらも物言わぬ原発事故の生き証人ではないのだろうか。
熊町小学校も予定地に入る。写真は校舎前の校庭との境となる道路。もはや森状態だ。
原発事故前から建つ看板。「福島原子力企業協議会」の会員企業を列記しているようだ。東芝、日立、鹿島建設などの企業名が見える。東電のロゴが古いままだ。
◯大熊町復興拠点計画
大熊町復興拠点計画図。
(福島民報2016年11月26日から)
・荒唐無稽というべきか、笑止千万というべきか、狂気と評するべきか。大熊町はイチエフから8キロの大川原地区を復興拠点に町役場の新設や広大なゴルフ場建設(ゲートボール場にしては広すぎるが)などの「復興」計画を公表した。
この計画図にはないが、木幡ますみさんによると、大熊町は32億円の予算でイチゴの水耕栽培をこの地区で展開する計画になっているという。住民のほとんと帰還しない場所に役場を新設するとか、販売の見通しが立ちそうにないイチゴ栽培に手を出すとか、住民の税金や復興予算を活用するには全うな感性と理性的判断ができているとは思えない計画が目白押し。
自宅から持ち出した遺影をスクリーニング会場のスタッフが測定した。問題なく持ち出せた。
・木幡さんのブログは「真澄の空」。原発に反対する大熊町町会議員として奮闘する木幡さんに注目!
◯富岡町の自宅に住み続ける松村直登さん
富岡町の松村直登さんを半年ぶりに訪ねた。、
牛の囲い込みは除染のために空っぽだった。牛たちはどこへ行ったのだろうか?
川の反対側の水田が囲い込みとなり、牛たちは健在だった。この日は朝の冷え込みが厳しく、田んぼの水の表面は薄氷が覆っていた。
ポニーのヤマは牛たちと共にピンピンしている。身体が二倍以上もある牛たちにいじめられることなく、エサを食うヤマは牛よりも生命力が強いのだろうか?
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これは富岡町の福島第二原発。先日の地震により1ⅿの津波が襲来したと報道された。(11月26日撮影)
問題は11月22日の福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震で、福島県は震度5弱だったが、その程度の揺れにより、3号機の使用済み燃料プールの冷却装置が1時間半ストップした事実の重みだ。
東電はこの第二原発の廃炉を決断せずに、虎視眈々と再稼働を目論んでいることも併せて知っておく必要がある。
◯蛇足:一年前の大熊町は以下のブログ記事でごらんくささい。
大熊町・双葉町・浪江町 帰還困難区域の現状とは?
◯取材活動支援のお願い
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