夏を満喫する「佐渡へっついの家」保養キャンプの福島のこどもたち
(写真はクリックすると拡大します)
撮影はすべて8月11日から13日。
東京電力福島第一原発の過酷事故直後から、福島県に通い、国による強制的な避難を強いられた地域を中心に繰り返し取材してきたが、私の長野県の実家の隣町の小諸市での保養サマーキャンプのボランティアを少し手伝ってきたが、本格的に保養キャンプを取材しないままでいた。
そこで、お盆の最中、ユニークさで評判の、「佐渡へっついの家」夏の保養キャンプを訪ねた。昨夏日程的に無理だったのでようやく現場を体験し、楽しむ子どもたちの気持ちと継続運営するスタッフのみなさんの大変さを痛感することができた。
「佐渡へっついの家」では、福島県の小学生たちが、思いっきり夏を満喫し、エネルギーが途切れることなく遊びまくっていた。小諸市の上げ膳供え膳のサマーキャンプとは大きく異なり、屋外で遊び、薪で五右衛門風呂を沸かし、へっつい(かまど)でご飯を炊いたり、年の差もものともせずに共同生活を送る知恵を学びながら、毎日を送っていた。
「佐渡へっついの家」は、詩人でNPOライフケア代表でもあり、原発事故後は福島の今を伝えるスタディツアーも実施する関久雄さん(65)が責任運営をしている。関さんとはこれまでも何度かお会いしているが、現場を訪ねるのは初めてで、ワクワクしながらの取材だった。
アブラゼミが地中から次々と湧いてくるような木々に囲まれた古民家。
関さんの話っぷりは、肩にまったく力が入っていない。
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「ジョニー」の愛称で子どもたちから慕われる関さんは、詩人であり音楽もやる。若い頃はヒマラヤにも登る登山家でもあった。
関さんたちは原発事故の起きた2011年から、放射能に汚染されてしまった福島県で自然と共に外遊びする機会を奪われた子どもたちが、新潟県佐渡島の放射線量の低い地で子どもらしく外遊びでき、保養し免疫力の向上を図るキャンプを運営してきた。
「福島県は、『福島安全宣言』を主張する政党まで現れ、反対意見が言いにくい状況に追いつめられている。原発事故による放射能汚染の「不安」に対してとやかくいうスタンスそのものがおかしい。子どもたちの保養だけは守りたい」と関さんは話す。
佐渡で一番大きな加茂湖でのボート乗り体験。まずはオールこぐ練習。
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関さんたちは、2015年から保養事業『佐渡へっついの家保養キャンプ』を主催。春と夏の保養キャンプ参加者はのべ400名になるという。
福島県ではすでに172人が甲状腺がんまたは疑いと診断された。131人は手術を受けた。
関さんは、単なる参加型ではなく、築100年のリフォームした古民家での、好き勝手ができない共同生活を送りながら、「一緒に創り上げる体験型」のエコロジースクールの役割を目指している。
食事の前にはみんなで手をつないで、食事に感謝する独自のお祈りをしてから「いただきます」となる。
「太陽と大地と海のめぐみと私たちを守ってくれるすべての存在に感謝していただきます」
その日の反省会を兼ねた夜のミーティング。
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・私が好きな関久雄さんの詩の紹介
「たとえれば」
なんで 逃げないのかと 言われ
なんで 帰ってこねえと 言われる
そこで育てるのは 子殺しと同じ と言われ
戻らねえのは 放射能は危険という
迷信に取りつかれてんだよって 言われる
なんて こたえたら いいだべか
チェルノブイリ法みたいに
食う 寝るところに 住むところ
生活の保障なかったら 簡単には出られね
20キロ圏内でも暮らせる
20ミリシーベルトならだいじょうぶだ と おっしゃる おめさんよ
まず あんたがそこさ 住んでみっせ
ミヤコさんがこう言った
たとえれば
わたしは 0度のところさ住んでいて いっつも寒い
おめさんは 26度のところに住んでいて いっつも暖かい
わたしは 10度のところさ行くと あったけえと感じるけんど
おめさんは 10度のところでは 寒い寒いと言う
つまりは そういうこと
そこで暮らさないと わからねえのです
ハローワークのとなり うず高く積まれたフレコンバック
隣の公園で子ども フツーに遊んでっから 驚きやしたか
街を歩くひと マスクもつけず
フツーに暮らしてっから 安心しやしたか
スーパーの壁 「ふくしまっ子復興祈念マラソン大会」のポスター
木枯らしにせつかれ 家路を急ぐ モノ言わぬひと
どこさ向かうのか
どこさ行きたいのか
(2015年11月18日)
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庭先では子どもたちが飽きることのないかのように、卓球で遊んでいる。
食事作りの責任者がボランティアを終えて新潟県の実家に帰っていくところを、走って跡を追うこどもたち。
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今年7月には、南相馬市小高区と葛尾村の避難指示が政府により解除された。「もう避難生活続けなくても大丈夫だからお帰りください」と住民に促しているわけだが、果たしてどれくらいの住民が帰還するだろうか。
東電福島第一原発の事故は収束しただろうか。放射性物質が大気中に拡散しないように蓋がされただろうか。汚染水が魚や海産物の宝庫の海に流出することを止められただろうか。原発事故収束現場で働く作業員が被ばくしないで仕事ができる現場になっただろうか。低線量被ばくの不安を一体誰が払しょくすることができただろうか。放射性廃棄物を入れたフレコンバッグのピラミッドが、浜通りや中通りの仮置き場から、大熊町と双葉町の所定の置き場に移動させれらただろうか。
3・11から5年半が経っても、答えは「NO」ではないか。
残念ながら自主避難も、親子が遠く離れた生活を続ける母子避難も続いている。子どもたちや大人たちの保養や自主避難はもう必要ないなどという無責任な言説が出てくること自体、寛容さを失った非民主的な社会の始まりだ。クワバラクワバラ。
関さんたちは佐渡の「へっついの家」での保養所を継続させていくため支援を募っている。目標額は100万円の「READYFOR」クラウドファンディングが9月7日まで実施されている。目標額までは後15万円足りない。
「子供たちを放射能から守り、日常を過ごすための保養の費用として100万円が必要です。皆さま、ご支援よろしくお願いします!」
◯取材活動支援のお願い
フォトジャーナリスト 山本宗補活動支援
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・郵便振替口座(加入者名 山本宗補)
00180-1-572729
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