シンポジウム「朝日新聞問題を通して考える「慰安婦」問題と日本社会・メディア」報告
「慰安婦」問題を考える前に、まずこの写真群を見つめてほしい。写真はアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)の入口の壁を埋め尽くした、旧日本軍により「慰安婦」とさせられた性奴隷被害者だ。研究者や市民活動家、写真家などにより、戦争中の性奴隷被害体験を名乗り出た女性たちの顔写真。彼女たちの国籍や居住地は中国、韓国、フィリピン、台湾、インドネシア、東ティモール、オランダ、日本など広範囲にわたる。この女性たちは、氷山の一角に過ぎないということも想像する必要もあるだろう。
拙著「戦後はまだ・・・刻まれた加害と被害の記憶」に4人の元「慰安婦」=性奴隷被害者を収録しているが、旧日本軍「慰安婦」の実態は性奴隷だったということは否定のしようがない。「慰安婦」問題は、戦時中の重大な人権侵害であり、朝日新聞が削除した吉田清治証言の否定に左右されることもない。日本の植民地支配、侵略戦争による占領政策が生んだ人間無視であり、日本軍将兵も国民も使い捨てた戦争指導者による犠牲を負わされた女性たちということだ。
◎日本軍「慰安婦」被害者の記憶をつなぐ写真展と映画上映会
シンポジウムの本題に入る前に、旧日本軍「慰安婦」被害者の記憶をつなぐ写真展と映画上映会が、なかのゼロで開催された(3月19日~25日)。展示された多数の写真を紹介するところから始めたい。
主催は写真展&上映会実行委員会、後援は戦時性暴力問題連絡協議会。会場の壁面は、主催者の女性たちが、これまでに韓国、中国、海南島、台湾、フィリピンなどの現地で、日本軍により性奴隷被害者とさせられた女性たちをインタビューした時の写真などで埋められた。◎
各国で女性たちに会い、証言を集め、撮影した主催者、スタッフのみなさん
韓国のハルモニ、姜徳景(カン・ドッキョン)さんが、「慰安婦」とさせられたトラウマを癒す一環で描いた、体験を元にした作品(コピー)も展示された。オリジナルは、90年代に、東京YWCAで展示公開された時に見たことがある。日本軍将兵、桜の木、裸の女性に見事に「慰安婦」問題の本質が描かれている。
韓国済州島の女性を強制連行したとする「吉田清治証言」が全否定されても、「慰安婦」問題全体を否定するものではない、という最低限の合理的な判断が、常識的にできる写真展だった。数名の性奴隷被害者の体験の一部を読むだけでも、旧日本軍「慰安婦」問題の醜い本質がどこにあるのかを、認識できていなかった人にも実感できる場となっていた。主催者の20年以上にわたる、地道な活動の成果は否定のしようもない。
映画は別会場で日替わりで上映された。私が見たのは、中国山西省の性奴隷被害者を訪ねてインタビューした「ガイサンシーとその姉妹たち」(班忠義監督)と、在日朝鮮人の宋神道さんの、政府に公式な謝罪を要求して提訴する10年間の裁判闘争を描いた「オレの心は負けない」(安海龍監督)の二本。どちらも「慰安婦」問題のの奥深さ、底なしさを見る者に考えさせる素晴らしいドキュメンタリー映画だった。他に9本が上映されたが、私は一日しか見ることができなかったのが残念だった。「ガイサンシーとその姉妹たち」は、班監督が丁寧な現地取材を克明に活字にした340ページをこえる著書を読んでいたので、とりわけ強い説得力で迫ってきた。
宋神道さん。(2008年11月の第9回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議にて、山本宗補撮影)
◎シンポジウム「朝日新聞問題を通して考える「慰安婦」問題と日本社会・メディア」
ここから本題。4月5日、東京外国語大のプロメテウスホールで、慰安婦報道問題で激しい朝日バッシングが起きたが、「慰安婦」問題の本質についてのシンポジウムが開催された。500席の会場は立ち見が出るほど。予想された妨害もないまま、桜が散り始めた季節の会場は熱気に満ちた。
主催 呼びかけ人(50音順):内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)・大森典子(弁護士)・川上詩朗(弁護士)・金富子(東京外国語大学教授)・坂元ひろ子(一橋大学特任教授)・田中宏(一橋大学名誉教授)・中野敏男(東京外国語大学教授)・林博史(関東学院大学教授)
今回のシンポジウム開催の経緯は、その朝日新聞報道がきっかけだ。主催者がこう記している。
・・・・・・・・・・・・・
「昨年8月、朝日新聞に検証記事「慰安婦問題を考える」が掲載されて以来、常軌を逸した朝日バッシング、理不尽きわまる「慰安婦」問題バッシングが繰り広げられています。
私たち呼びかけ人は、朝日新聞社が10月に立ち上げた第三者委員会のメンバー構成に問題があるとして同社に申し入れをおこない、またその報告書が出されたのを受けて、今年1月22日にも申し入れをおこなってきました。第三者委員会の報告書や朝日新聞社の対応、さらには日本社会の状況にはきわめて憂慮すべきものがあります。
そうした取り組みの中で、この問題は朝日新聞だけの問題に留まらず、日本社会とメディア全体に関わる問題であることを確認し、広く各界に呼びかけて、歴史学研究者、法律家、メディア関係者の立場から共同でシンポジウムを開催し、社会にアピールしたいと考えました」
・・・・・・・・・・・・
朝日新聞バッシングと、元朝日記者の植村さん攻撃を憂慮したメディア関係者によるシンポは、昨年秋に続けて開催された。10月15日に開催されたシンポ「朝日バッシングとジャーナリズムの危機」(主催は「創」編集部、アジアプレスインターナショナル、アジア記者クラブ、週刊金曜日編集部ほか。司会進行は篠田博之「創」編集長)も500人以上が集まり盛況だったことは、すでにブログにお伝えした。10人をこえる登壇者の発言も詳しく報じた。この報告と合わせてご覧ください。
今回は、慰安婦問題や日本の戦争加害の問題を長年研究してきた研究者、それに週刊誌報道やネトウヨによる個人攻撃により、内定していた神戸の大学教授のポストが白紙になるなどの批判の矢面に立たされた植村隆さんも登場する、注目される重要なイベントとなった。
このブログで紹介する各登壇者の発言などの文責は、山本個人にあることをまずお断りしておきたい。登壇者順にポイントを紹介していきます。
◯1:基調報告:林博史(呼びかけ人、関東学院大教授・現代史)
林先生は呼びかけ人代表として、安倍政権が登場してからの慰安婦問題の動きについて説明し、昨年、朝日新聞が検証記事を出し、慰安婦問題の専門家が一人も含まれない第三者委員会設置されたことを危惧し、研究者・弁護士の要望書を10月9日に提出したこと、そして第三者委員会の報告書発表を受け、呼びかけ人として朝日新聞に申し入れを行ったことを説明した。詳細な申し入れ内容は配布資料で配られた。
また、林先生らが、「日本軍「慰安婦」問題の解決をめざし、日本軍「慰安婦」制度に関する歴史的な事実関係と責任の所在を、資料や証言など明確な出典・根拠をもって、提供する」ことを目的で開始した、「Fight for Justice 日本軍「慰安婦」――忘却への抵抗・未来の責任」のホームページ上に公開されている。
この時の要望者のポイント1:1990年代から積み上げられてきた日本軍「慰安婦」問題に関する研究は、吉田清治証言に依拠しない。よって、朝日の吉田証言取り消し記事によってまったく揺るがない。2:朝日の特集記事を根拠に、河野談話の見直しする理由はない。
3:第三者委員会の委員に、学術的成果を挙げてきた研究者f一人もいない。女性に対する重大な人権侵害問題なのに、7人の委員中、女性が一人だけのバランスを欠いた構成。
・「朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会」への要望者
「朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会」についての研究者・弁護士の要望書を10月9日に提出しました。同日午前中に、呼びかけ人のうち5人で朝日新聞社を訪問し、第三者委員会事務局長と朝日新聞社広報部長代理らに対して、要望書を渡しながら約1時間にわたって、質問をすると同時に要望を伝えました。この時点で、204名のみなさんの署名も渡してきました(その後寄せられた方を合わせて、計237名)。さらに 同日午後2時からは、衆議院議員会館にて記者会見をおこないました。27人のメディア関係者が集まりました。
・「慰安婦」報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書と朝日新聞社の「改革の取り組み」に対する申し入れ(2015年1月22日)のご報告
「朝日新聞への申し入れには、内海、大森、金、田中、中野、林の6人が参加しました。また同時に、歴史学研究会から委員長の久保亨さんが参加されました。~中身のある議論をしたいと考え、編集局長あるいはそれに代わる編集局の方の出席を求めましたが、残念ながら広報部長代理を含め広報部の方しか出てきませんでした」
この問題は朝日新聞だけではなくメディア全般に関わる問題であり、元朝日新聞記者への脅迫はメディアの問題のみならず大学の学問教育の自由にも関わる問題です。そこで開催されたのがこの日のシンポジウムだった。
・林博史氏がレジュメにした朝日新聞に渡した申入れ書のポイント。
1:慰安婦問題の本質そのものを否定し、第三者委員会の記事検証という役割から逸脱。
2:女性の人権の視点が欠落。この論点が取り上げられなかった。
3:国際社会に与えた影響についての報告書の結論が間違っている。林香里委員による定量的、客観的な調査の結果が結論として採用されるべきだったが、他の2本の主観的な報告を採用。
4:個別意見の問題点として、北岡委員と波多野委員が、朝日慰安婦報道によって日韓関係がこじれ、和解を困難にしたとする政治的見解を取り入れている事などが、客観的な記事検証といえない。
5:報告書を受けた朝日新聞渡辺雅隆社長の対応は、8月5日、6日の特集内容と比べて大きく後退。
朝日新聞に申し入れた文書はクリックしてご覧ください。
◯2:歴史学研究者の立場から:松原宏之(『「慰安婦」問題を/から考える』編者、立教大教授)
「慰安婦制度、あるいは慰安婦は存在しなかったという論点は、公文書など確認できる歴史学研究の観点からは成り立たないことは断言できる」
・松原氏のポイントの一つは、日常にまで進行する植民地支配の影響抜きに、朝鮮人女性が「慰安婦」にさせられていった構造的背景を理解することは無理がある。戦時の話として限定しまうのではなく、はるか以前からそういう状況が作られていった。さらに、戦後に冷戦構造が終わるまで、「慰安婦」とさせられた女性たちの発言が許されないような社会状況があったことも考える必要があると指摘。
松原氏が薦める本
◯3:法律家の立場から:伊藤和子(弁護士、ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
・韓国の一つの島での「強制連行」に関する一人の日本兵の証言が否定されたことで、朝鮮半島から一人の女性も「強制連行」されなかったといえるのだろうか?
・一つの島での否定により、なぜ強制連行を主張する慰安婦とされた女性たちの証言全てが虚偽だと評価できるのだろうか?
・仮に「強制連行」が否定されたとしても、「甘言、強圧」などの意に反する徴用という実態を否定できるのだろうか?
・[リクルート⇒移送⇒慰安所]での生活という全てのプロセスにおける人権侵害としての実態を否定できるのだろうか?
国際社会の慰安婦問題に関する評価:クマラスワミ報告とマクドゥーガル報告
国連拷問禁止委員会の日本政府に対する勧告
・締約国による条約上の義務のさらなる違反を防止する手段として、この問題について公衆を教育し、あらゆる歴史教科書にこれらの事件を記載すること。←←伊藤弁護士は国際社会の流れに沿う当然の勧告だが、日本政府は無視し続けていることを指摘。
・伊藤弁護士のまとめ:「ウソも100回言えば、真実となるのが今の状況。日本が全体主義に近づいている状況にある。正しいことは正しいと言い続ける必要がある」
◯4:メディア関係者の立場から:ジャーナリスト 青木理(『抵抗の拠点からー朝日新聞「慰安婦」報道の核心』
著者)
「誤解を恐れずにいうと、時間との戦いのメディアに誤報はつきもの。オレは誤報などしたことがないと言いきれる人はよほどのうそつきか、仕事をしていないかのどちらか。私にもほおかむりしたい誤報が何本かある。日本に限らないことだと思う。ただし、誤報は訂正し謝罪しなくていはいけないのが大原則。朝日が吉田証言を訂正し、取り消したことが遅きに失したならば批判されて当然」
「朝日新聞という特性もある。日本を代表するメディアがどこかといわれたら、部数では読売かもしれないが、朝日だと思うでしょう。朝日の記者は偉そうな人も多い。実際に紙面に影響力も持っているし、給料も待遇も良いし、取材力もトップクラス。自他ともに認める日本を代表するメディア。朝日がミスを犯した場合、他の新聞よりもことさら批判されるのも止むをえない」
「ただ今回、週刊誌メディアが「売国奴」「国賊」「反日」などという言葉で朝日バッシングをした。「国益を損ねた」と一部の新聞が論評した。ジャーナリズムがメディアを批判するのは構わないが、「売国奴」「国賊」「反日」などとは絶対に使ってはならないというのが最低限の矜持だったはず。それが今回は「国賊」「反日」が平然と飛び交ってしまった」
「たとえば、イラク戦争で大量破壊兵器があるとして侵略戦争を繰り広げた。しかし、そんなものはなかった。米国の一部メディアがある程度検証し批判したが、日本のメディアは米高官や欧米メディアを喧伝するような形で、山のように大量破壊兵器があるという記事を書いたのに、検証したり訂正したことなど一つもない」
「問題の本質は何か。今回、これだけ朝日新聞がパッシングされたのは、朝日新聞だから、慰安婦問題だから。だからこそこれだけの批判を浴びた」
「知識人の転向はジャーナリズムの転向から始まる」と丸山真男さんは言ったことを引用し、朝日バッシング、植村さんバッシングは、「この国のメディアとジャーナリズムが総転向に入りつつあるという、歴史的事件ではないか」と青木さんは提起した。
◯5:研究者の立場から:林香里(東京大学大学院教授、朝日新聞第三者委員会委員)
欧米主要メディアで慰安婦報道を約600本チェックした、その内訳表。
林氏は国内メディアも同様にチェック。「国際報道でも国内報道でも、2007年の第一次安倍政権と2012年12月以降の第二次安倍政権以降で報道量が明らかに上がっている。慰安婦報道とは吉田清治氏のことかと思っていたところが、実は安倍晋三氏についての報道なのだとわかった」
2007年と2013年のピークぶりから、安倍首相の登場により慰安婦問題が国内、海外での報道が異常に急増していることが明白。
慰安婦に関する記事で引用された公人発言では、安倍首相が圧倒的に多い。第二位が橋下大阪市長。第三位が村山元首相。安倍首相の発言が圧倒的に注目を集めていることがいえる。
「慰安婦問題は日韓関係が問題だと思っていたところ、必ずしも欧米の報道では、韓国以外の中国、台湾、フィリピン、インドネシア、オランダなどの慰安婦だった人が割と頻繁に引用されていることがわかった。」
「性奴隷(Sex Slave)という言葉は焦点になった。欧米では慰安婦はSex Slaveと言葉が使われ、定着していることがわかる。昨年11月に読売新聞が突然に「性奴隷」という表現を不適切な表現として撤回すると報じたにも関わらず、大きなニュースにはならなかったことに驚いたことを指摘。
・林香里氏のまとめ:「慰安婦報道について、国内議論と国際議論には大きな違いがあることがわかった。なぜこれほどの違いがあるのかは議論され検証される必要があると思った」
◯6:特別発言:植村隆(元朝日新聞記者、北星学園大非常勤講師、名誉毀損裁判原告)
20分で私の苦悩と日本社会の抱える問題を話すのは厳しい、と笑いを取ってから開始。身振り手振りも豊かに、壇上を行ったり来たりしてのジェスチャー交えた話しぶり。普段から大学生を飽きさせない講義の工夫を彷彿とさせる印象を強く受けた。
植村さんを標的にする一例として、あるヘイトスピーチ本が植村さんをモンスター扱いにし、大学に抗議することを指示する内容の漫画をスクリーンで紹介。「植村隆は万死に値する」とか、犯罪を誘発するような内容だと批判。韓国の日本軍「慰安婦」名乗りで第1号となった金学順(キム・ハクスン)さんに関する署名記事を書いたことの経緯や、朝日以外の同業他紙も同様に金さんの記事を熱心に書いた事実を指摘した。
・植村さんの話のポイントは、1:故吉田清治証言の記事は1本も書いていない。2:旧日本軍「慰安婦」に関する記事は、韓国で元従軍「慰安婦」を名乗り出た最初の金学順(キム・ハクスン)さんについての署名記事を2本書いただけ。3:当時の韓国では、「挺身隊」は「従軍慰安婦」を指した。4:植村さんの朝日の記事の後に、産経も読売も金学順さんを直接取材し、同様の内容の「慰安婦」報道をした。北海道新聞も同様の記事を書いた。5:キーセンと書かなかったのは、キーセンは元々は芸者になるための学校で、「売春婦」ではないからと解説した。
「産経新聞も91年に金学順さんを取材して、北京に強制連行されたと書いている。被害者に寄り添った記事なんです。読売新聞も同様に「挺身隊」を使った記事を書いている。キーセンとは80年代は韓国の売春観光を指したのですが、元来、キーセンとは韓国の芸者さんのことで、金学順さんは学校に行っていただけ。
産経も読売も私をバッシングしている代表的新聞ですが、90年代は被害者を取材して被害者に寄り添った記事を書いている。共通しているのは、金さんが意に反して日本軍の性の相手をさせられたということ。90年代はそういう時代でした。金学順さんというカミングアウト第1号が登場し、勇気ある声が世界に伝わった。北海道新聞の記者も「女子挺身隊」の美名の元にと書いた。
にもかかわらず、私が「挺身隊」ということばを使ったからと標的にされている。これはフェアではない。ジャーナリズムではない。当時のことを今の記者は全く省みないで私を標的にしている。天に唾をはくようなものです」
私が朝日記者で署名記事で書いたが、吉田証言は私は一本も書いていません。朝日のリベラリズムへの嫌悪。朝日新聞は戦後は侵略戦争に反対し、アジアとの和解、共存を大きな言論の柱にしたのは事実です。それが好きで私は朝日に入った。
「確かに朝日は恵まれた大きな組織だが、私に関する報道はフェアではない。家族、大学にまで不当で激しい攻撃。私をバッシングするということは、金学順さんをバッシングするということです。被害者の彼女たちの証言が信用できないとか、きちんと聞こうとしない。こうした異常な報道で、世界の常識とかけ離れた大きな報道をしている。慰安婦問題の解決の大きな障害になっていることに気づかないといけない」
「みなさん、私は捏造記者ではありません。不当なバッシングには決して屈しません」
(会場から大きな拍手)
植村さんを応援する資料集。編集発行は植村応援隊。500円。
植村さんが朝日紙上に書いた日本の金学順さんの記事から始まり、週刊誌や新聞報道による植村バッシングの内容、北星学園大学への脅迫の内容と経緯などが網羅されている。
今年初め、植村さんが西岡力氏と週刊文春を名誉毀損で告訴した訴状、櫻井よしこ氏と新潮社などを名誉毀損で訴えた訴状も付いている。
植村さんの書いた2本の署名記事を徹底的に攻撃し、植村バッシングすることで朝日新聞自体を総攻撃する、極端に政治的な動きの中での、植村さんバッシングであることがよくわかった発言だった。
・林博史氏:日本のメディア、知識人とか研究者のあり方を考えるとき、「パク・ユハ現象(筆者注は質疑応答の末尾に)」をどう考えるのかは重大な問題。戦後、革新勢力、護憲派を含め、植民地主義の問題を理解してこなかったという致命的欠点が、彼女の議論が受け入れられてしまうのというのが今の日本の状況だという問題意識を持っている。「慰安婦」の平均年齢は25歳などという、根拠のないデータを出してまで、なぜ彼女は日本を弁護するのだろうか。
20年の取り組みの中で韓国の運動も変わってきている。日本に対して主張するだけではない普遍的な女性の人権問題という視点を持ってきている。安倍政権が20年来の研究成果、見つかった公文書などをまったく無視してしていることと同じだ。日本人が植民地主義の問題を明らかに理解していないことが、否定派の攻撃が容認されてしまうことにつながっている。
・青木氏:「政権がこれほど公然と露骨にメディア介入したことは戦後初めてだ」「メディアの人間は震え上がったのではないか。これほど徹底的にやられるのかと」「メディアが政権とファイティングポーズを取ろうとする当たり前の姿勢だが、安全運転をしているところは何も言われない。さらに萎縮や自粛が進行する」
・植村氏:「どこの新聞社にも慰安婦問題に飛び込もうとする記者がいたのです。被害者を直接取材した産経の記者も読売の記者も署名記事じゃないから、私のようにどこまでも追いかけられない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・(筆者注)パク・ユハ現象とは?
パク・ユハ氏(朴裕河)氏が2014年に朝日新聞社から「帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い」を出版し、日本の知識人が高く評価していること。朝日紙上でも特集された。
パク・ユハ氏(朴裕河 @parkyuha) のプロフィール(アマゾンから引用)
1957年、ソウル生まれ。現在、世宗大学校日本文学科教授。慶應義塾大学文学部を卒業後、早稲田大学大学院で日本近代文学を専攻、博士号取得。韓国に帰国後、夏目漱石、大江健三郎、柄谷行人の翻訳など、日本近現代の文学・思想を紹介。『和解のために―教科書・慰安婦・靖国・独島』で第7回(2007年度)大佛次郎論壇賞を受賞)
本人のfacebookへの投稿<帝国の慰安婦ー植民地支配と記憶の闘い>要約からの矛盾極まる部分を引用しておきたい。いったい彼女は朝鮮半島の「慰安婦」とさせられた女性たちの証言を否定しようとしているのか、何なのか?:「日本軍は詐欺や誘拐によって連れてこられた場合返したり、別の就職先を斡旋するように業者に指示したケースがあり、軍として詐欺や誘拐を組織として容認したとは言いがたい。それでも、日本が宗主国として、植民地の女性を差別と強姦と搾取の対象にしたのは間違いない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◯7:大森典子弁護士閉会のことば
「今の日本社会の現状が浮き彫りになったと思います。日本社会が世界から孤立し、孤立していこうと向かう先は非常に危険なかつての戦争ではないかと。これにどう闘うか、次のステップにしたい。ありがとうございます」
大森弁護士の著書「司法が認定した日本軍「慰安婦」」(かもがわブックレット、600円)手軽な資料になります。
◯まとめの代わりに、集会の最後にアピールとして会場に呼びかけた、「植村応援隊事務局長・今川かおる」さんの訴えが、安倍政権登場後の日本社会の危機的状況を的確に言い当てているので、今川さんの訴えを以下に引用したい。
「植村さんに関わる理由が二つあります。植村さんに起こっている非難、攻撃は根拠のない言いがかりだからです。私は怒っています。一人の市民としてこの植村問題を見過ごすことができませんでした。いまあちこちの自治体が、憲法をテーマにした集会の名義後援を断るようになりました。原発震災の被害者がいないかのように政府は再稼動に舵を切りました。沖縄で日々起きていることもそうです。
すべての根っ子は同じだと思います。ここで押し返さなければ、やがて私たちも植村さんと同じように理不尽な闘いを強いられることになると思います。専門家だけに任せていてはいけないと思います」
◯取材活動支援のお願い
フォトジャーナリスト 山本宗補活動支援
ジャーナリストの活動を支えてください。
・郵便振替口座(加入者名 山本宗補)
00180-1-572729
・銀行振込
城南信用金庫
店番036 普通口座 ヤマモトムネスケ 口座番号340130
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
もうかなり昔のことです。その酪農家の爺様は亡くなってからも20年以上経っています。満州から中支に行った兵隊でしたが、慰安所(と言ったかどうかは良く解りません)が駐屯地にあって、必ず若い朝鮮人の娘だったと言っていました。18歳とか言っていたが、皆14歳ほどでなかったかと言っていました。一晩に数人の兵隊さんを相手にしていたそうです。
朝鮮人の娘が良いのは、その時になると(ブログ主の判断で一部割愛しました)からだと言ってました。朝になると、小川で腫れ上がった局部を、泣きながら洗っていたそうです。相手にするのは、爺さんたちばかりの下級兵ばかりで、上等兵は金を払って町に行っていたそうです。
爺様は酒を飲んだりした時しか話してくれませんでしたが、朝鮮の娘たちはしょっ引かれて来たようなこと言ってたと思います。可哀想だったとしんみり話していたのが記憶に残っています。
投稿: そりゃないよ獣医さん | 2015年4月17日 (金) 14:21
負けるな北星!からきました。
北海道人です。
丁寧なご報告ありがとうございました。
地方で集会にはいけないのでありがたいです。
植村氏の継続を決めた北星の勇気をたたえるとともに、あまりにも長いものに巻かれろに終始する現在の状況に強い危機感を持っています。
北海道の知事選も惨憺たる結果でした。
植村さんとTPPと原発と沖縄基地問題はそっくりだと思っています。
今植村さんや翁長知事を応援しないと、この国は大変なことになります。
北海道の泊も動かしたらおしまい。
異常事態に警報を鳴らす健全さが必要です。
がんばってください。
投稿: 中枝博美 | 2015年4月18日 (土) 15:19
そりゃないよ獣医さん様
中枝博美様
コメントありがとうございました。
投稿: 山本 | 2015年4月18日 (土) 17:27
私は、一次安倍内閣の時から政権の危険性を感じ、二次、三次と権力の横暴がエスカレートしている現状に強い危惧を持っております。
私は、以前から月刊誌「世界」の購読者です。新聞報道やネットで知り、植村隆さんの家族を巻き込んんで、右翼がバッシングをしていることに強い怒りを持っていました。そして何カ月前の「世界」に植村さん自身の項で「慰安婦問題は捏造ではない」の中に応援隊が、新しいネームアドレスを知り、何の力にもなれませんが、陰ながら私も応援してますとのメールを入れました。
勿論、記事の内容で詳しいことが判りなおさら怒りが爆発しそうでした。昨年の夏に国連人権規約委員会から、「ヘイトスピーチ」と「特定秘密保護法」では国民の人権が守れないので、改善の勧告が日本政府に出されています。それにも関わらず、安倍政権は何の手も打たず、「ヘイトスピーチ」の関しては、右翼を応援しているように感じます。
中に写真入りで青木理さんが講演していますが、青木さんの著書「抵抗への拠点から」を今年の一月に読みました。植村さんのことと言い、朝ステの古賀茂明さんのこと言い安倍政権横暴さは止まるところを知らず、あきれ果てるばかりです。
私は「ふじさわ・九条の会」はじめ反安倍政権の市民運動にいくつか入って運動をしています。植村さん、訴訟を東京と札幌に起こされて大変ですが良い弁護士がついて応援団もいますので、頑張って下さい。
投稿: 長野協一 | 2015年4月18日 (土) 20:05