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2015年2月10日 (火)

安倍政権は後藤さん、湯川さんの解放に本気だったのか?

 忘れてはならないことは、しっかりと可視化しておかなければいけない。

悲しい結末となってしまった。後藤さんと湯川さんのご冥福を祈るしかできない。

IS(イスラム国)に身柄を拘束されていた後藤健二さんと湯川遥菜さんが殺害された(誰も確認する術はないが)。
果たして、安倍首相と政府は、二人の解放にどこまで本気で取り組んでいたのだろうか?多くの人は疑問視している。

 ここでは、誰もが知ることのできたテレビや新聞報道を中心に、二人が人質となってからの経過を時系列に並べた。安倍首相と政府の対応を振り返って見ることができるように記録しておきたい。
(経過は東京新聞と朝日新聞を参考にした。写真は主に報道ステーションの画像だが、NHKや他の民放の画像もある。それ以外は私が撮影したものである)

◯2014年
・7月初旬:イスラエルによるガザ空爆開始(~8月中旬):一ヶ月半の攻撃によるパレスチナ人の死者2000人超。
(子ども約540人、女性約250人)負傷者1万人以上

1503895_822997397710536_322404881857月21日撮影(代々木)

・7月28日:湯川遥菜さんがトルコから陸路でシリア入国。
・8月8日:アメリカがイラク北部で「IS(イスラム国)」への空爆開始
8月16日:湯川さんがイスラム国に拘束との情報を政府が把握。ヨルダンに現地対策本部設置
・9月5日:常岡浩介さんとハッサン中田(中田考)元同志社大教授が、スパイ容疑の湯川さんの裁判の通訳を要請され、IS支配地に入る。だが、湯川さんにも、仲介のIS司令官にも会えず帰国の途に。(常岡さんの著書より2月20日追記)
10月6日:常岡浩介さん宅が公安により家宅捜索され、取材機材など多数が押収される。北大生のシリア渡航計画に関して。
・10月25日:シリア入国の後藤健二さんからの連絡途絶える。
11月1日:政府は後藤健二さんの件でも現地対策本部設置
11月:後藤さんの妻にイスラム国関係者とみられる脅迫メール
・11月18日:安倍首相、国会を21日に解散すると発表。
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12月:後藤さんの妻に20億円の身代金請求メール
・12月14日:総選挙投票日。自民党が圧勝。
2014

12月24日:外務省幹部が後藤さんの妻を訪ね、「政府はテロリストと直接交渉しない。身代金要求にも応じない」と伝えていた。(3月5日、報道ステーションの検証で明らかにされた新事実)(3月31日追記)
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_aaa5837jpgsumijpgweb報道ステーション3月5日放送画像から。3月31日追加


・12月31日:友人の戦場カメラマン遠藤正雄さんから後藤さんも拘束されていると初めて知る。遠藤さんはイラク、シリア、トルコ、アフガニスタンなど、繰り返し繰り返し取材してきたベテランだが、現役でもある。

◯2015年
・1月7日:フランス、シャルリー・エブド襲撃テロ事件発生。編集長など12人が殺害される。(2月16日追記)
・1月16日(~21日):安倍首相が中東歴訪へ出発(エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治政府の順
・1月17日:安倍首相がエジプトのカイロで演説。
「ISIL(イスラム国)の脅威を食い止めるために、ISILと闘う周辺諸国に2億ドル支援」と発表。
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・1月20日14時50分:イスラム国と見られる組織、湯川さんと後藤さんの二人の殺害予告と2億ドルを請求する声明がネットに流され、政府が確認。首相官邸に対策室設置。
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・1月20日:安倍首相がエルサレムで会見。「「許し難いテロ行為で、強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と演説。演題の脇には日の丸とイスラエル国旗
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・1月21日午前00時50分:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA、私も所属)として、後藤さんと湯川さんの二人の解放を求める声明を日本語、英語、アラビア語で順次公開。
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・1月22日:ハッサン中田(中田考)元同志社大教授が日本外国特派員協会で緊急会見。アラビア語で時間的余裕と、人質の解放を求める
・1月23日:後藤さんの母・石堂順子さんが、日本外国特派員協会で記者会見。「健二はイスラム国の敵ではありません」

中谷防衛大臣は、中東歴訪に関して、所管外だったとコメント。つまり防衛省は歴訪の事前相談を受けていなかったということと、二人の解放に関しても相談を受けていないという意味に取れる
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・1月24日午後23時すぎ:湯川さんが殺害されたと見られる写真を持つ後藤さんの画像がネットに流れ、政府が確認。身代金はなくなり、後藤さんとの引き換えに、ヨルダンに収容されているサジダ・リシャウイ死刑囚の釈放を要求。
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1月25日午後1時すぎ:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)として、後藤さんの解放を求める緊急声明を日本語
、英語、アラビア語で順次発表。
・1月27日午後23時ごろ:後藤さんの画像と新たな声明がネットに流れたことを政府が確認。
「残された時間は24時間」
・1月28日:ヨルダン政府メディア担当相が、ヨルダン人パイロットを釈放すれば、死刑囚を釈放する用意があると発言。
1月28日午後7時すぎ:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)は、アワープラネットTVと協力して、後藤さんの解放を求める緊急声明をアラビア語通訳付のライブでユーストリームで配信
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・1月29日午前8時前:後藤さんの声で新たな音声メッセージ。イラク北部モスル時間の日没までに死刑囚をトルコ国境まで移さないとパイロットは処刑されると警告。
・1月29日午後22時すぎ:後藤さんの妻が、英文の声明をイギリスの財団を通じて発表。後藤さんとヨルダン人パイロットの解放を求める内容。

・1月30日午後18時半~:首相官邸前で後藤さんの解放を求めるロウソク抗議。
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・菅官房長官は、「政府側から犯行グループに働きかける考えはあるか?」と問われ、「ありません」と断言
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・2月1日午前5時ごろ:後藤さんが殺害されたと見られる映像がネットに流れ、政府が確認。
・2月1日午前6時42分:安倍首相が記者団に、「政府として全力で対応してきたが、痛恨の極みだ」と述べる。
・午前7時4分:安倍首相が緊急関係閣僚会議で、「罪を償わせる」と非難。
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2月1日午後1時すぎ:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)として、後藤健二さんら人質殺害を受けての緊急声明を出す。
2月1日午後4時~:首相官邸前で、後藤さんを追悼するサイレント行動
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・2月2日:東京新聞朝刊、「半年間、直接交渉できず」の記事。
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・菅官房長官の会見答弁。
「身代金の額を交渉しようとしたのか?」「ありませんでした」。「要求額を下げる交渉するも最初から排除?」「交渉しませんでした」
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・2月3日:安倍首相の国会答弁
 「2億ドルの支援というフレーズに「非軍事の人道支援」との表現はない。「こういう演説をやれば二人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのか?」と質問する共産党・小池晃議員。
いたずらに刺激をすることは避けなければいけないが、テロリストに過度の気配りをする必要は全くないと安倍答弁。
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「テロに屈することと、慎重に言葉を選ぶことは違うと思う」と問う小池議員に対しては、答える代わりに小池議員を批判する答弁。
小池さんのご質問は、まるでISILを批判してはならないという印象を我々は受ける
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・2月4日:安倍首相の国会答弁。
犯行グループは「ISILと特定できなかった」。身代金は「政府に対する要求ではなかった」。「政府は二人の人質解放に全力を尽くしてきた」と民主党議員の質問に答えた。
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・自民党高村副総裁は、後藤さんは真の勇気ではなく、「蛮勇」だったとコメント。
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2月8日午後5時~:ハチ公前で湯川さんと後藤さんを追悼する集い
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仮に湯川さんと後藤さんが、大手商社駐在員か、ODA関係者ならばどうだったのか?政府の人質解放のための本気度は、最初の段階からまったく異なるのではないだろうか。

 1999年のキルギス人質事件(日本人鉱山技師4人とキルギス人通訳ら)では、3億円が機密費から身代金として密かに支払われ、解放されたことを、当時の担当者だった鈴木宗男氏が朝日新聞に答えている(2月7日)。
人質解放交渉の全容など政府が明らかにする必要のないことは当然だ。

・これまでに報道などで明らかになったのは、中東歴訪を絶好のタイミングとして、二人の日本人を拘束しているIS(イスラム国)が何らかの要求をしてくることを想定していなかったという危機管理能力がないことを証明している。「国民の生命と財産を守る責任がある」と常々繰り返す安倍首相と政府は、二人の命など最初から見捨てるつもりでいたのではないか、という素朴な疑念がますます沸いてくる。

邦人救出には武器使用ができる自衛隊の派兵が必要だ、という方向へ矛先を変える安倍首相と政府には、二人の死に対する哀悼の気持ちが感じられないだけでなく、政府の責任を棚に上げ、自己責任論へと転嫁する姿勢も見えてくる

 70年前に敗戦となって終結した長い戦争の日々。前線の軍人も本土の民間人も、国によって命は無きが如しの扱いだった。戦争の教訓は、国は決して国民の生命も財産も守りはしないということに尽きる。戦争体験者の聞き取りをたくさんやってきて、何よりも痛感するのはそのことだ。戦後70年の今日、改めて国の本質を突きつけられることは悲しいことだ。

◯追記
・2月5日:外務省がフリーカメラマン杉本祐一さんのシリア渡航計画を新潟日報の記事で知る。杉本さんは1月5日にチケットを手配していた(2月18日の院内集会での本人弁)
・2月6日:首相官邸の杉田官房副長官が外務省に説明を求め、外務省領事局長が官邸に説明に出向き、官邸の意向でパスポート(旅券)返納命令が決定された。(2月18日の院内集会で国会議員情報で明らかにされた。2月20日追記)
・2月7日:フリーカメラマン杉本祐一さんのパスポートが外務省により取り上げられた(強制返納)。シリア取材を計画したことが理由。

二人の人質殺害予告が起きてから、メディアや国会などで安倍首相、政権批判を「自粛」する動きが著しかった。国民の知る権利さえも損なうことになる大手メディアの動きは、まさに3・11直後の「大本営発表」を彷彿をさせるものだった。

 この危機的状況に歯止めをかけたいと、有志が、「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」を募る活動が始まった。呼びかけ人はおかない形で賛同者を募っている。
_8ds1224jpgweb参議院議員会館での記者会見、2月9日

 想田和弘、今井一、坂本龍一、平野啓一郎、古賀茂明、小林節、是枝裕和、島薗進、吉田照美、荻原博子、上野千鶴子、内田誠さんら、2月9日の段階で表現に携わるさまざまな分野の1200人が賛同している。もちろん、私も賛同した。

_8ds2173jpgjpgweb院内集会でパスポート強制返納の経緯を話す杉本祐一さん。(2月18日)(2月20日追加) 
 照屋寛徳議員(社民党、弁護士)は、居住と移動の自由を保障する憲法第22条第2項のに違反する可能性が極めて高いと政府を批判

追追記(3月31日)
 安倍政権(日本政府)が、後藤さんと湯川さんの救出をする意思がなかったことは、昨年12月24日に、外務省幹部が後藤さんの奥さんに、解放交渉することも、身代金を払うつもりも無い、と直接伝えたと報じた、3月5日のテレビ朝日・報道ステーションによる検証報道で明らかとなった。(追記した部分)

その結果、二人の人質殺害事件を悪用し、安倍政権は自衛隊を邦人救出に派遣する必要があると、議論をすり替え、国民の命と財産を守ると口癖のように言う、自らの責任を回避した。仮に、人質となったのが、大使とか外交官だったとしたら、安倍政権は最初から同じように動いたかどうかを想像してみるとよくわかるだろう。


◯取材活動支援のお願い
フォトジャーナリスト 山本宗補活動支援
ジャーナリストの活動を支えてください。

・郵便振替口座(加入者名 山本宗補)
00180-1-572729

・銀行振込
城南信用金庫
店番036 普通口座 ヤマモトムネスケ 口座番号340130
 

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コメント

まとめてくださって、ありがとうございます。
イスラム国と交渉もせずに、何を全力で開放に努力したのかがわかりません。
「身代金は、国に対してでない」というのは、詭弁では?
ここで既に国民を見捨てています。自衛隊が出動していたら、もっと大勢の犠牲者が出ていたことでしょう。つまり、もっと国民の命を粗末にしていたことになります。
湯川さんを助けたくなかった、死んでもらいたかったとしか思えません。常岡さんが、イスラム国に頼まれて裁判の通訳に行くことになっていたのを前日にガサを入れて、パスポートを押収したりしています。これが怪しい。でも、この部分は憶測ですから、断定はできません。
いずにせよ、志葉玲さんがいうように、「全力で助けるふり」をしていたというのが、的をついている気がします。それを、自衛隊の海外派遣につなげようと……。みんなでNOと言いましょう。

投稿: 笠原眞弓 | 2015年2月10日 (火) 17:47

酷すぎる↓

人質殺害から1週間たたず…安倍首相が“夜の豪遊”もう解禁-
日刊ゲンダイ
(2015年2月8日09時26分)

 安倍首相にテロの犠牲者への「哀悼」の気持ちはあるのだろうか。「イスラム国」による後藤さん殺害映像の公開から1週間と待たず、再び、夜な夜な会食に繰り出しているのだ。自身の不用意なスピーチが邦人殺害事件の引き金になったと批判される中、“豪遊”再開の無神経ぶり。トップとしての力量以前に人間性が疑われる。

投稿: 通りすがり | 2015年2月13日 (金) 00:10

後藤さん、湯川さんの事件にかんして、一連の流れを 時系列で 見るのは、安倍内閣が、救出に本気だったのか、否か、参考になりますね。

投稿: 鈴木孝雄 | 2015年2月14日 (土) 15:14

安倍は狂っている。本当に恐ろしいことだ。

投稿: 江田佐登子 | 2015年2月14日 (土) 20:36

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