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2014年6月 5日 (木)

ビルマ(ミャンマー)の民主化のために闘うアウンサンスーチーさんのこと Aung San Suu Kyi in Japan(in 2013)

(写真はクリックすると拡大します)

_8ds8784(2013年4月13日 都内にて撮影)

 民主化運動の指導者で、ノーベル平和賞受賞者として知られるアウンサンスーチーさん。6月の誕生日で69歳になる。一年前の4月、彼女は日本を27年ぶりに訪問した。写真公開には1年の縛りがあったので、その時に撮影した写真を紹介したい。

 かつて、アジアの軍事政権といえばビルマ(ミャンマー)を指した。1988年から私も熱心に通った国だ。アウンサンスーチーさんは、母国の軍事政権下では、自由な民主化活動が許されず、88年にイギリスから帰国後は、大半の年月を自宅軟禁の繰り返しで、彼女が指導者の政党活動もありとあらゆる弾圧対象となった。民主化活動家の逮捕や投獄と拷問、生きるために軍政批判をしない圧倒的多数の国民、国軍の横暴さ。どれをみても、戦争中の日本の治安維持法が機能していると置き換えてみることができた。ちなみに、ビルマ国軍の母体を軍事教育したのは旧日本軍である。

 東京オリンピックの二年前の1962年に、ビルマ国軍がクーデターにより全権を掌握してから約半世紀。軍政のイメージが変わり、アウンサンスーチーさんがようやく政治活動を再開できるようになったのは3年前だ。高級軍人が軍人メンタリティーで国の政治行政経済教育保健衛生などすべての分野を牛耳る政治から、表向きの民政化が図られた。

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 いま、ビルマは軍事政権下で2008年に国民投票にかけられ強行成立させられた、軍人が国政のトップを握り、議会の4分の1を指名された軍人が占めるという憲法下にある。国軍の最高司令官が、国が危機に瀕していると判断したときには、クーデターで全権を握る権利まで与えられている「憲法」だ。真に民主的な憲法に変えるためにアウンサンスーチーさんたちが活動している。

 母国民主化を願い、日本に政治亡命し難民認定されたり、強権的な軍政下から逃れてきた在日ビルマ人の若者たちは、ひところは1万人をこえた。ビルマ人が民主的な国として憧れた日本だが、自民党政権下での対ビルマ外交は、少数民族に助け舟を出すわけでもなく、密かに民主化勢力を支援するでもなく、軍政に明確に加担する路線で一貫していた。

 そして今や、安倍晋三首相の復権に伴い、かつてのビルマ軍事政権下の愚かな軍人のメンタリティーによる政治行政を目指すような危険な風潮が日本政治に蔓延している。敗戦後の日本を形づくった平和憲法と9条の精神を根底から台無しにしてしまおうとする安倍の解釈改憲が現実を帯びてきている。見せかけの「平和」に安住し、民主主義を守る不断の努力をないがしろにしてきた大きなツケともいえる。ビルマ人は多大の犠牲を払い、命をかけて軍事政権を民主的な政府に変える努力を怠ることはなかった。

 アウンサンスーチーさんのビルマは、民主主義を確立するために軍人が作った憲法を変えようとし、一方の安倍の日本は、侵略戦争を二度としないことを誓った憲法の平和主義を首相自ら棄て去ろうと躍起となっている。

 アウンサンスーチーさんが来日中に語った母国への思いと民主的な政府を確立したい熱い気持ちを少しでもシェアしたい。以下の内容は、私も運営委員をつとめるビルマ市民フォーラム(PFB)が昨年6月に発行した「アリンヤウン」特別号からの転載です。写真は私の撮影です。

◯在日ビルマ人によるアウンサンスーチーさんの歓迎会(2013年4月13日)
 _8ds8751在日ビルマ人が企画し主催した集まりに、1000人をはるかに超す参加者であふれた。

_aaa0514(外務省の招待での来日。警護が異常に多かったのが目を引いた。在日ビルマ人はアウンサンスーチーさんに近づくこともできなかった)

 アウンサンスーチーさんの短いスピーチと、会場を埋め尽くした在日ビルマ人から前もって提出された質問に答える形で進行。ほとんどビルマ語が使われた。スピーチでのスーチーさんのポイントは二点。ひとつは、母国とのつながりを絶やさないでくださいということ。二点目は、団結してほしいということ。

 「例えどこの国に帰化したとしても、同じ国の人間なのです。私たちの国は連邦国家であり、多くの民族が住んでいます。そのことをとても誇るべきだと私はいつも言っています。~~こうやって多くの民族がいる国であるのですから、その意識をみなさんに持ってほしいのです」

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 「団結、団結といくら言っても、言っている間にまた言わなくてはなりません。~~なぜ私たちは団結しないかというと、自分に自信がないからです。自分に自信がないと、他人が自分より良くなることに不安を覚えるからです。みなさん、その意識を捨ててください」

 「誠実な道徳を持ち、自分への自信をはっきり意識する必要があります。他人に対し妬みを持っていたなら、自分は妬んでいるのだと受け入れてください。そうしないと自分を変えることはできません」


・質疑応答
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Q1:ビルマの憲法はどのような基準で作られるべきですか?

AS:「憲法を作る組織はより多くの国民に信頼されていることが大条件です。これが一番重要なことです。国民が信頼していない組織が作る憲法に、国民が敬意を払うことはないでしょう。~~今の憲法に対しては、既に私たちNLDや他の組織が多くの批判をしてきています」

 別の憲法関連の質問に対する回答:「この憲法を作る組織の中にどういう人が入っているか。全民族が信用し同意される組織になってから、真の連邦国家を作ることができます。2015年選挙を自由に行うことはそんなに難しくはないが、今の憲法のままでは絶対に公正にならないと私は答えました」 

Q2:東京医科歯科大大学院の博士課程で勉強しています。博士課程を卒業した後にビルマに帰り、研究を続けたいです。医学研究所を外国と共同設立するために、政府関係者に協力を呼びかけていただけませんか?
AS:「今の大学は教育省が主人公になっています。ヤンゴン大学を手始めに、学生中心の大学へと変えていかなくてはなりません。大学が改革したら、学生たちの向上心も高まり、研究所も進歩すると思います」

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Q3:アメー・スー(アウンサンスーチーお母さん)の健康が心配です。後継者を指名してください。決まっていたら教えてください。

AS:「ビルマは王政ではありません。私は私の後継者を自分で選ぶことはまったく考えていません。その代わり、できるだけ次の世代を向上し育成します。これは本当に難しいことです。ビルマの教育システムはこの50年間で非常に低下し、今の若い世代は昔の若い世代の人たちのレベルに達していないのです。~この責任はその人たちにはありません。ビルマ全体の責任です」

_aaa0278(参加者の在日ビルマ人)

Q4:国内平和と経済投資・経済支援のどちらを優先すべきでしょうか?

AS:「平和なくして経済成長はできず、経済成長なしで国内平和を維持することはできない」
「私たち兄弟民族はお互いに勘違いをしているから、いまだに国内平和を実現することができない。私たち兄弟民族には過去の暗い影がたくさんあります。その暗い影の責任は大多数であるビルマ族たちに多くあり、その事実は受け入れるべきでしょう。今までずっとビルマ民族指導者による政権が続いてきたことです。ビルマ民族に大いに責任があるとはいえ、少数民族も協力しなくてはなりません」

◯アウンサンスーチーさんと民主化支援団体との交流会(4月17日、都内ホテルにて)
 出席者はビルマ市民フォーラム、アムネスティー・インターナショナル日本、ビルマ情報ネットワークの三団体から代表。私は交流会の写真担当として出席。
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・スーチーさんの冒頭あいさつ:
「私たちは民主化を達成したわけではありませんが新しい役割をみなさんにお願いしたい。紛争解決のために私たちはどのような役割を担うべきか。紛争の原因はとても深いところに端を発しています。歴史的なものであるため、解決は簡単ではありません」

「なぜ違う考え方を持っている人たちを排除したいのでしょうか。政治囚問題の本質はここにあります。自分たちと意見が違ったり、価値観が異なったりする集団や個人が存在することを受け入れられないと考える人々がいるから、政治囚は存在しているのです。このことも異なる民族・宗教の人々の間で起きる紛争の原因となっています」

「重要なことは紛争の原因を排除することです。主張の核なるところは変えないとしても、人権侵害をした人々の態度や考え方に働きかけることで人権侵害を防いでいくことに強調のポイントを移していただきたい」

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・質疑応答から
Q(PFB根本敬先生):ビルマの国民和解に深刻な問題として、排他的ナショナリズムがあると思います。この現象と解決方法についてどのように考えていますか?

AS:「残念ながらビルマには、特に諸民族のなかに、私たちの国を国家として認めていない人々がまだ大勢います。統治体制に欠陥があるので~私たちはビルマ連邦として独立しましたが、真の意味での連邦を実現したことはないのです。従って、それが排他的ナショナリズムとは考えていません」

「イスラム教徒の問題は宗教的側面を考えなければなりません。陰謀説は危険であることは十分用心していますが、私は意図的に問題を扇動しているグループが確かに存在していると考えています~~政治的理由から扇動を行う政治集団の有無も考えなければなりません」
(スーチーさんは市民による推測だと強調した上で、具体的に国軍翼賛政党のUSDPと、ディペーイン事件を起こした当事者とされるスワンアーシンと、かつて国民から恐れられた軍諜報部を牛耳ったキンニュン将軍に忠誠を誓う人々、それに政府内部の人間を挙げた。陰謀の理由は、このまま順調に2015年総選挙を迎えたくないためだとのこと)

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Q(秋元由紀ビルマ情報ネットワーク):開発事業に対する反対の意思を住民が表明できるようになったが、開発と援助についてのスーチーさんのスタンスと日本のODAについての質問。

AS:「良い影響をもたらす投資が何かを考えてみたらどうでしょうか。投資する側は寄付のために投資するのではありません。彼らは慈善事業とは違います。彼らは、利益を上げるために投資するのであり、そこには何の問題もありません。私たちに必要なのはガイドラインであり、突き詰めれば法の支配です。法の支配は私たちの国が大いに必要としているものです

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「日本政府はODAに関する協議を、ビルマ政府だけでなく、立法府や我が党(NLD)などの政党とも積極的に行っていただきたい。我が党は最大野党なのです。ODAは両国間だけで決めるべきものではありません。ビルマ政府は相手のひとつであれば良いのです~~外務省がビルマ政府と同じくらい、立法府と国民民主連盟(NLD)とも意思疎通をするように。外務省は政権は変わるということを常に心得ておくべきです。いつまでも昔の政府のままではないのです」

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_aaa0718交流会後の記念写真

◯あとがき
 私にとっては15年ぶりの再会だった。1998年の4度めの単独インタビュー直後に秘密警察に捕まり、国外退去させられて以来だった。ビルマ軍政のブラックリストになり、ビザが発行されず、国境周辺の取材はできても、ビルマ国内に入ることができなくなった。2008年の死者10万人以上を出した巨大サイクロン・ナルギスの被害を取材しようとシンガポール、マレーシア、フィリピンの各ビルマ大使館でビザ申請しても出なかった時の悔しさを思い出す。もう16年もビルマ国内の急変を見ていないことはとても残念だ。とはいえ、3・11後は自分の足元が崩壊しかねないので、何よりも国内での取材活動を優先している。

 在日ビルマ人による歓迎会では、主催者の計らいで、最前列の席を確保できた。在日ビルマ人の多くは若い世代となり、アウンサンスーチーさんに会うのが初めてで、彼らの熱い期待感が会場に充満していた。

Asskjuly1995toppage11996年7月に撮影。6年に及んだ第一回目の自宅軟禁解除直後、

 交流会ではひと目見て、スーチーさんの顔のシワを強く実感した。声の若さとか調子とか、仕草に変わりはなかった。あいさつの時に顔を覚えていてくれたのにほっとした。交流会終了後の記念撮影前に、3・11を取材したフォトルポ「鎮魂と抗い~3・11後の人びと」(彩流社)をスーチーさんに直接献本した。その際、「原子力発電所だけはビルマに導入しませんように」とスーチーさんに話した。驚いたのは、間髪をいれずに冗談とも本気とも取れる返答が返ってきたことだ。

「そのためには私を大統領にしてください!」
 
 アウンサンスーチーさんは二度の集まりで多岐にわたる内容と詳細に語っている。詳しく知りたい人には、以下の「アリンヤウン」のアウンサンスーチーさん来日特集号の入手をおすすめします。お問い合わせはビルマ市民フォーラム(PFB)事務局までご連絡ください。また、PFBのホームページはこちらです。

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・アウンサンスーチーさんの取材を繰り返した頃の写真はこちらをクリック。アウンサンスーチーさんの写真 Part1&Part2


◯取材活動支援のお願い
フォトジャーナリスト 山本宗補活動支援
ジャーナリストの活動を支えてください。

・郵便振替口座(加入者名 山本宗補)
00180-1-572729

・銀行振込
城南信用金庫
店番036 普通口座 ヤマモトムネスケ 口座番号340130


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