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2013年4月28日 (日)

歴史を学ぶ意思のない首相と自民党は国民益を損なう

 今日、安倍政権は、「主権回復の日」を政府主催で祝う式典を実施した。サンフランシスコ講和条約発効61周年にあわせて開催されたとされるが、沖縄が米軍統治下に入り本土から切り離された、沖縄県民にとっては「屈辱の日」でもある。「主権回復、国際社会復帰」と良いながら、主権行使よりも、対米追従路線を選ぶ方向を「良し」とするのが、安倍自民党政権に他ならない。
 米軍基地問題、オスプレイ配備問題、原発再稼働、TPP交渉参加問題と、どれを取っても、主権を主張することよりも、米国の言いなりというのが、安倍政権の実態だ。

安倍晋三(首相)の何か問題か?

・「戦後50年の1995年の終戦記念日に村山富市首相(当時)が、日本の植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」について、安倍首相は「侵略という定義は、学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係において、どちらから見るかにおいて違う」と国会で答弁した
(毎日新聞社説:村山談話の評価 首相の歴史認識を疑う 2013年4月26日)

・「Asked in parliament whether he would reconsider an official apology that Japan issued in 1995 for its colonization of Korea in the past century, Mr. Abe replied: “The definition of what constitutes aggression has yet to be established in academia or in the international community. Things that happened between nations will look differently depending on which side you view them from.”

there are such things as facts. Japan occupied Korea. It occupied Manchuria and then the rest of China. It invaded Malaya. It committed aggression.」(日本が韓国を占領し、満州と中国を占領したことは事実だ。マレー半島を占領したのも事実だ。日本が侵攻したのである)
(ワシントンポストweb社説:Shinzo Abe’s inability to face history 4月27日)

 ワシントンポスト紙は、「he appears to entertain nostalgia for prewar empire.」(「戦前の帝国主義の郷愁に浸っているようにみえる」とまで指摘した。

・「国のために命を落とした英霊に尊崇の念を表するのは当たり前だ。わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。その自由を確保している」(4月24日の衆議院予算委員会での安倍首相答弁。閣僚の靖国参拝が中国、韓国の反発を招いていることに対して)

・「安倍首相は、陸海空自と在日米陸軍のブースを訪れ、陸上幕僚監部の広報室長から「戦車がありますが、乗られますか」と水を向けられると「乗ろうか」と応じ、展示中の陸自の最新型戦車「10式戦車」に乗った。迷彩服の上着とヘルメットを着けて戦車の砲手席に立ち、カメラや携帯電話を構えるコスプレ姿の客らに笑顔で手を挙げて応えた。 首相は自衛隊最高指揮官だが、戦車に乗るのは異例」(毎日新聞:ネット世代向けイベント:各党がアピール 首相は戦車に 4月27日) 
下の写真は産経新聞webから
 Plc13042720530012p1幕張メッセで開かれた「ニコニコ超会議2」。「自衛隊、在日米陸軍」を訪れ戦車に乗る安倍晋三首相=27日午後、千葉市美浜区(松本健吾撮影)

 単なるイベント会場で、一国の首相が、自衛隊基地公開で武器に触ったりして喜ぶ子どものような、幼稚な感性をさらけ出している。この写真が一人歩きする意味が想像できないとしたら、大きな問題だ。

・安倍(首相)は、第一次安倍政権時(2006年9月26日~2007年8月27日)に、従軍慰安婦の「強制連行を示す証拠はなかった」と、93年の河野談話を否定すると受け取られる発言をした。そのため、アメリカ下院の謝罪要求決議をを皮切りに、オランダ議会、カナダ議会、EU議会で謝罪要求決議がつぎつぎと出された

 決議では、当時の安倍政権の従軍慰安婦問題に対する姿勢と、旧日本軍が現地の女性たちを強姦したり、駐屯地に長期監禁して性奴隷にした事実を否定しようとする態度を厳しく批判した。当たり前の対応といえるが、要するに、安部政権の思考が、国際社会の人権感覚からしたら見過ごすせないほど事実を無視し、女性を冒涜するものだと受け止めたわけだ。

「公的なあいまいさのない謝罪」を日本政府に求めたアメリカ下院決議の前文は以下のとおりだ。
 「日本の公共・民間の関係者は、慰安婦の苦しみに対する政府の真剣な謝罪を盛り込んだ一九九三年の河野洋平官房長官の慰安婦関連談話を希釈したり撤回しようとしている」

安部政権の誕生を待っていたかのように急増しているのが在特会(在日特権を許さない市民の会)主催に参加する若者たちだ。在特会はかねてから、「従軍慰安婦はねつ造だ、朝鮮人慰安婦は売春婦」と、聞く耳に耐えない人種差別・蔑視発言を繰り返してきた。戦前回帰思考が明らかない安部(首相)と価値観を共有するからだろう。実際、日の丸、日章旗を掲げる一団は、原発問題やオスプレイ配備問題でも登場し、「再稼働バンザイ」を叫び、「オスプレイ歓迎」を叫ぶ。安倍自民党と路線が瓜二つな点も指摘しておきたい。
_aaa9680 「在特会(桜井誠会長)」が主催する、在日排斥デモ。日の丸や日章旗を掲げ、参加者は「韓国人は殺せ」「日本から叩き出せ」とヘイトスピーチを繰り返した。(2013年3月31日、新大久保 山本宗補撮影)

・中国人性暴力被害者の、日本政府に対する謝罪と賠償を要求する裁判闘争を長年闘ってきた大森典子弁護士は、その著書「歴史の事実と向き合って」で、当時の安倍政権の歴史認識をこう批判している。

「慰安所に女性たちが集められた経緯の『強制』性が問題なのではない。『慰安所』で彼女たちは自由にそうした行為を拒否出来なかった、ということが本質的な問題である」「圧倒的な数の女性たちは。慰安所から逃げることも性的サービスを拒否することも出来なかったのであって、こうした制度の本質や被害の中心に率直に眼を向け、かつ、その被害を受けた女性たちの苦痛に思いをいたすことがすべての出発点である」

以下はブログ形式にする前の私のホームページに掲載した雑記帳からの転載です。安倍晋三(首相)の本質がはっきりと見えてくると思うので、6年前の記事ですが読んでみてください。
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宗補雑記帳から:2007年5月26日 「安倍晋三首相は『ご破算で願いましては』男

 ご破算で願いましては・・・。安倍首相はそろばんが得意だ。ここでいうそろばんというのは、歴史の事実を一言でいとも簡単に洗い流してしまう、人として首相としてあってはならない姿勢を意味している。本当の算盤の熟練者とは異なることは断っておきたい。

 彼がオウムのように繰り返す「戦後レジームの見直し」キャンペーンは、まさしく「ご破算で願いましては」のやり方だ。その結果が教育基本法改正、日本国憲法改正、その後に続く自衛隊自衛軍化、9条の破棄、自衛隊米軍下請化、天皇元首化、報道規制化などの「戦前忘却路線」だ。よっぽど自分が生まれ育ってきた戦後の体制が気に入らないのだろう。

 戦後レジームの見直しだけを声高に繰り返すことで、安倍が抹殺し歴史から消し去ろうとしているのが、「敗戦」が戦後レジームを産み落とした事実であり、敗戦を自らの意志で招き寄せ日本の崩壊を招いた戦前戦中レジームの責任のありかだ。戦後も責任を取らないままで生き延びた天皇を担いだ戦争指導者であり、軍部と仲良く歩んだ政治家であり、戦争と植民地化で行われた日本軍将兵の罪状も含む。

 安倍政権誕生後、教育基本法改悪から、国民投票法を成立させ、憲法が禁じる集団的自衛権の見直し指示などと矢継ぎ早だが、首相ひとりの考えと間違った歴史認識からだけで実現するわけはない。先日の朝日新聞月曜コラム(5月14日)の早野透氏の記事で知ったのが、安倍政権の政策の中枢を固めるのが「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の顔ぶれだという記事だ。会の代表は中川昭一、幹事長は衛藤晨一、事務局長を安倍晋三が務めるという。

 中川も安倍も二世のボンボン議員で靖国参拝派だというところが共通する。記事によると、歴史認識を共有する戦後生まれの戦争を知らない世代の若手議員たちが、ある時、戦争中に子ども時代を送った長老格の河野洋平議員を事務所に呼びつけ、従軍慰安婦問題で謝罪した「河野談話」をやり玉にあげ、河野氏をつるし上げた。文中には「つるしあげ」とはもちろん書かれていないが、安倍氏らとのやりとりが記録に残されているらしく、発言が正確に引用されている印象を受けた。

 「この程度のことを外国に向けてそんなに謝らなきゃいかんのか。兵隊にも何も楽しみがなくて死ねとはいえない。楽しみもある代わりに死んでくれと言っているわけでしょう」(K議員発言)
 ものすごい恥さらし発言だ。こういうメンタリティーの男が議員を務める資格があるのかと思わざるをえない。自民党、公明党の与党女性議員はこの発言を黙っていていいのか。
 「慰安婦の証言の裏づけをとっていないではないか」(安倍発言)
その後にも安倍氏と思われる発言が続くが、誰の発言かはあいまいにされている。

 実は、このつるし上げの一件は、以前にある人から聞いたことがあったので、このことかと思い至ったのだが、議員の名前を伏せたり安倍氏自身の発言の引用をあいまいにした点が残念だった。隠さずにストレートに出してほしかった。

 それにしても、この一連のやりとりから伝わってくるのは、安倍首相らの戦争を知らない子どもたち世代(中川と安倍の二人とほとんど同世代の自分も含まれることが嫌になる)の怖さと同時に、歴史認識以前に日本人は中国人や朝鮮半島の人たちよりも優秀であると思いこんでいるらしい傲慢さだ。この点は石原都知事にも共通する。

 日本を近隣諸国から信頼され尊敬される国にしたいと安倍政権が本気で考えているのならば、過去の歴史的事実に対して開き直ることではなく、玉砕や特攻を美化することでもなく、おごることなく、謙虚な姿勢で歴史と向き合うことではないのか。戦争という自他を傷つける殺戮行為の繰り返しとなる要素を、日本政府が積極的に地球上からできる限り取り除く努力をするのが国の政治家の責任ではないのか。

 三週間後、安倍政権とは真っ向から対立する生き方をしてきた福島菊次郎さん(86歳)の講演会が明大リバティタワーで開催される。「写らなかった戦後 菊次郎の海」刊行直後の講演以来だから2年ぶりとなる。年齢的にも最期の機会となるかもしれないので、勝手に「遺言」講演会と名付けさせてもらった。定員250人の会場だが、立ち見になるくらいに盛り上げたい。

 今回も進行役をやることになるが、二等兵としての戦争体験が原点として、日本の戦後体制と格闘してきた福島さんの、取材者としての体験に裏打ちされた生の声を、若者やジャーナリズムの仕事をしている記者たちに聞いてほしいと願っている。会場入り口では福島さんが自ら制作した写真パネルも展示する。報道カメラマンとして一世を風靡した福島さんの代表作もスライド上映で紹介する予定だ。福島さんの生き方について私がこれまでに書いた記事はほんの一部を紹介しているにすぎない。どうか本人の表情を見ながら、戦争を軍隊を嫌う福島さんの肉声を聞いてほしい。必ず心に来るものがあるはずだから。(転載了)
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◯ブログ後記
 映画「ニッポンの嘘」上映開始から話題になっている福島菊次郎さんだが、このときの明大での講演会は、教室が満杯となり、立ち見が出るほどで、入場できない人たちをお断りしたほど大盛況だった。講演会の感想などについては6月25日の雑記帳でどうぞ。

 その福島菊次郎さんを昨年末の衆議院総選挙前に、柳井市のアパートに1年振りに訪ねた時のことは、2012年12月23日のブログ、「福島菊次郎と愛犬ロク」に書いたが、菊次郎さんの安倍政権誕生の憂慮をここに転載しておきたい。

 「自民党は長いこと平和憲法を変えたいと思っていた。だが国民を怖れていた。石破はコワイね。戦争をやりたいやつばかりだ。朝鮮半島(韓国と北朝鮮)や中国が日本に持っている怨念を僕らは知っている。安倍らの世代は違う。やっぱり戦争を全く反省していない。日本はまだ戦後を迎えていない。僕もそうだが、アジア蔑視感はまだある。経済が行き詰まった時に戦争が始まる」

 中国、韓国との領土問題、外交関係の険悪化、北朝鮮の脅威と未解決の「拉致被害者」問題などを目の前にしながら、迷彩服姿で自衛隊の戦車に乗り込みご満悦の安倍晋三(首相)。
 米紙に指摘されるまでもないが、国民益に反するだけだ。参加するべきではないTPP交渉に置いても、安倍発言の行き過ぎの火消しを計る米政府に借りをつくったり、アジア諸国との交渉のプラスになるはずもない。
 安倍自民党と維新の会などが企む憲法改悪が現実のものになったら、いかに恐ろしいことになるのかが想像しやすいのではないか。憲法96条を改正したら、憲法9条の国際紛争を解決する手段としての武力行使を禁じた縛りを取り除き、自衛隊を国防軍の名で・・・・・・・・・・。<strong>かつての侵略戦争の事実さえも誤魔化そうとする政府が誕生したら・・・・、そんな日本社会にしてしまっていいのだろうか。

 ちなみに、福島菊次郎さんは靖国神社をこう断罪している。戦後世代の私だが、戦争体験者の聞き取りをやってきたこともあり、まさしくその通りだと思う。

「いまだに116万兵士の遺骨を異郷に野晒しにして、『靖国参拝』が嗤わせる。靖国神社こそは若者を死地に駆り立て、ボロ布のように使い捨てた『軍国主義の大量殺人装置』以外の何ものでもなかったのだ。僕も何度か靖国の「生贄」にされそうになった」


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