安倍(右派純粋培養)公明連立政権に抗う・官邸前脱原発行動と「国防軍」反対デモ取材で考える
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7月の参議院選後、原発推進路線をひた走る自民党・公明党・「維新」が3分の2以上の議席を占めることになるかもしれない国会議事堂。2013年1月11日、今年最初の官邸前原発反対抗議の日。
「主権在民」とは、憲法第一条で規定されている国民に主権があることを意味する。敗戦後の日本社会が民主主義国家として再生し、国民ひとりひとりの日々の生活で最も大切な権利だといえる。3・11の大震災と原発事故後、最も危機に瀕しているのがこの「主権在民」の価値観であり思考であり権利だ。安倍自民党政権の復活で「主権在民」の思想は風前の灯火といっても言い過ぎではないのが現実だと思う。
言い方を変えた方がいいかもしれない。国民の7割を超える民意が脱原発を望むにも関わらず、核のゴミを処理する能力もないのに、原発は日本経済再生に不可欠だとか、原発の再稼働も新規原発も必要だと持論を述べる政治家や政党や安倍政権の動きは「主権在民」の思考に反している。
原発が一部の国民の犠牲の上に成り立つことなどにお構いなく、政界に影響力を行使する大企業や、電力会社に巨額融資する都市銀行が儲かるシステムの温存を計るため、再稼働や原発輸出に熱心な政策は「主権在民」に反している。
原発を止めたくない、あきらめたくない理由には、独自の核兵器開発と保持がある本音が隠されてもいる。
まるで原発震災からの復興と原発事故の収束という最優先課題から国民の視点をそらそうとするかのように、安倍自民党政権は、憲法改正と国防を優先課題に持ち出したことも「主権在民」に反する。原発推進路線の反省と謝罪を置き去りにするには都合の良い課題であり、急ぐ優先順位でもないのに、自衛隊を正規軍として防衛予算を増やし、憲法改正して「国防軍」と変えようと狙っているとしか思えない。明日にでも海外派兵して米軍に従属する軍隊として展開したいのではないか。
写真は今年最初の官邸前の原発反対抗議行動(1月11日)と、自民党が衆議院選で公約した自衛隊を「国防軍」とすることに反対する若者のデモ(1月13日)から。
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その前にまず紹介したいのは、2000年に88歳で亡くなった「日本の原子力の生き字引といわれた物理学者の武谷(たけたに)三男さん(1911年生まれ)だ。武谷さんのインタビュー記事を読んだが、原子力の本質をわかっている人の明快な表現が誰にも分かりやすい。以下の引用は、アヒンサー発行「私、子ども生んでも大丈夫ですか」(2006年10月第3刷。編集:PKO法『雑則』を求める会)から
「陸軍航空本部から理化学研究所の仁科研究室に、『ウラニウム爆弾を作れ』という命令がきて、僕もやることになりましてね。でも、日本は何もないからできないと分かっていましたから引き受けたのです」。
武谷さんは戦争中に原爆の研究をしていたという科学者。。「原爆と原発は双子なんですよ」とか、「原発が危険だというのも人権問題です」と言い切ることができる辺りを注目してください。
「直径わずか1センチの燃料棒は表面は300度ですが、核分裂している中は2000度をこえているのです。あまりにも温度の差がありすぎるし、圧力も70気圧で。~~まー、とんでもないものなのです、原発といいうのは。電気を原発で作るなんて狂気の沙汰だと僕は思っています」
「核のゴミを無害にすることはできないのです。ごく少量の実験室の中でできたとしてもあれだけの大量のものは無理ですね。コストが合いませんから~~どうしても原発をやらなくちゃいけないというなら、最低限、廃棄物を処理できる程度にすべきで、それ以上は絶対にやっちゃいけないのです」
「戦争の技術というのはものすごく乱暴な技術なのです。原爆と原発は双子なんですよ。だから、はじめから原発が安全なものであるはずがないのです。死の灰の処理だって、廃炉のことだって、何も考えちゃいないのですから、まったく。原発も、後は野となれ山となれなのです~」
「原発が危険だというのも人権問題です。それも、普通は今生きている人間の人権のことで、未来に続く生命の人権までは考えていないのです。しかし、放射能をばらまいたら、未来の生命を直撃するのですから、原発の問題は未来の生命にとっての人権問題でもあるのですよ」
1974年、原子力船むつは、航行中に放射能漏れ事故を起こした。「その責任をまったく取っていないのです。「むつ」の責任を取らせていたら、もう少し、日本の原子力も慎重になったと思うのですが。そういうふうに責任を取ろうとしない体質が直らない限り、日本で原発の大事故は必ず起きるだろうと僕は思います」
「JCOの臨界事故は、要するに、原発と原爆は同一のものだということを忘れて、いいかげんなことをやったからなのです。臨界というのは、まさに中性子爆弾なのです。~中性子爆弾というのはいわゆる原爆のように爆発して爆風や熱線が出なくてもいいわけです。~だから、いつも原子力を扱う時は原爆と双子のようなモノを扱っているという意識がないといけないのです」
◯2013年最初の官邸前・議事堂前原発反対抗議行動(1月11日)
(追記)「私たち福島の人間は、明けましての後のおめでとうがまだいえないんです。福島みずほさんも鎌田慧さんも良いことをいいますが、放射線量の高いところで暮らせとか強制的に家を出ろとか体験してません。ですから、訴える力は福島の人間が持っていると思います。年明けから福島の女たちは省庁巡りをし、行動を起こしています。
昨年もらったトイレで考えるというカレンダーの7月分を読みますよう。『他国のものを奪うためにこの国は戦争をしました。できない相談だったんです。地震列島に原発。できない相談だったんです。命よりも経済を優先する。できない相談だったんです』。できない無理ばっかりやったからこんな国になったんでしょう。その責任を取ってください、54基の原発造った安倍晋三さん」(富岡町から避難している木田節子さん)
「日本は米国の倉庫ではない 米倉NO! 人命より金儲け命経団連」
「拝啓 安倍首相殿 ・国民の7割は原発ゼロ ・日本列島は地震の巣 ・核ゴミ処理は未解決 ・人知は核を制御できない 裏に続く」
美輪明宏、ビートたけし、タモリなどの著名人風刺画が展示されている。たけしの顔には「結局お前はどっちなんだ」と書かれている。
川崎市からの参加者。「我が輩は原発に反対である」と家で飼うネコの写真を大伸ばししたプラカードを掲げる。
「民意は脱原発 原発即刻廃炉!」 「NUKE IS OVER!」
先に紹介した武谷三男氏は、原爆の研究をしていたにも関わらず、中国大陸の侵略戦争に反対したことで戦争中に特高に二度捕まったことがあるという。
「原爆を落とされて負けたために、原爆で戦争の責任を言い逃れることができたのです。しかし、僕は、日本人は原爆を非難する前に、あの中国や朝鮮でやったことを反省しなくてはいけないといっているのです。だって、中国や朝鮮でどれだけのことをしたと思いますか。ありとあらゆる残虐なことをやったのですよ。勝手に人の国に押し入って、因縁をつけてやくざと同じです」
「アジアの国々へ謝罪をしなかったというのは、日本人にとって非常に大きい意味を持っているのです。つまり、日本が戦争の反省をしっかりしなかったために、戦後の社会が戦争の仕組みのまま続いてしまったのです。戦争は勝ちさえすればいいと。それと同じ考えで戦後もやってきたのです。~~後始末を考えない社会です。戦争と同じで、後は野となれ山となれで」
(1月16日追記:日本軍が中国やフィリピンなどでどんなことをしたかの具体例を知りたい方に)中国で村人を殺害し強姦し家々を焼き払うなどの証言をした金子安次さんの聞き取り記事。
陸軍軍医として中国人捕虜を生体解剖したことを証言した湯浅謙さんの聞き取り記事。
日本兵に強姦され、長期間性奴隷として監禁されたフィリピン人のナルシサ・クラベリアさんの聞き取り記事。
◯「第2回・国防軍反対!デモ」(1月13日)
年末に第1回のデモがあり、二回目のこの日の参加者は約100人。小規模だったが、参加者は官邸前の反原発で少なくなった若い世代が大半だった。デモコースはNHK前の代々木公園入口からスタートし、渋谷駅前交差点、宮益坂を上がり、表参道交差点を曲がり、明治通りを渡って原宿駅前から代々木公園に戻るルートだ。年明け早々の三連休の夜、若者が街頭を埋める繁華街を歩く姿が対照的だった。
(追記:こういう集まりに協力な助っ人。「火炎瓶テツ」さんだ。デモの前に一言)
「ふだん反原発の活動してますが、憲法を改めるといいますが、大いに改めるといったら大改悪でしょうが。9条改悪にも大反対しますが、いま9条以外の問題が非常にきなくさい。自民党案でいくと9条の改悪と並行して言論弾圧もしようとしている。これは「普通の国」以下の国になろうとしている姿だ。市民社会と呼べない社会を造ろうとしているんですよ、みなさん。反対することだらけで忙しいと思いますが、憲法大改悪の問題、みんなで手を合わせて阻止しましょう」
「若者に銃ではなく仕事を! 憲法9条を活かそう! 改憲ダンコ阻止!」
広島原爆で被ばくした肥田舜太郎医師も、日本人の戦争体験談には反省が欠けていると話す。(アヒンサー発行「私、子ども生んでも大丈夫ですか」2006年10月第3刷から)
「戦争でやられるまでどこかで賛成してきたわけでしょと。警察が怖くて黙っていたから戦争になった。だから黙っていてはダメなんだということを教えないから伝わらないんです。南京陥落でちょうちん行列して、バンザイバンザイやってきたわけですよ。その人が今になって戦争は辛かったななんて言ったって、そのことを反省しない限りだめですよ」
「あの戦争が起こる前は、みんないやだと思ったことは間違いないんです。自分が兵隊にとられるのも、自分の子どもがとられるのもいやだって思っていたんじゃないですか。そういう気持ちがあったのに、反対できなかったの。あの時、反対すると連れていかれて殺されると、それで私は勇気がなくて言えなかったと、いまから思うとそれが残念だ、といえば、今の子どもにもわかりますよ」
「愛の反対は無視・無関心」 「I Love 福島」「無知は恥ずかしくない 無視・無関心は恥である」
「渋谷のみなさん、一緒に歩こう。声をあげよう。国防軍反対。声を上げよう、大きな声で。改憲反対、国防軍反対。話し合いが大事だ。軍事費増やすな。被災地に回せ。国防軍反対。戦場に送るな、若者送るな、戦争するな、命が大事。命を守ろう。改憲反対、貧困なくせ。いま日本は大変でしょう。憲法改悪しなくちゃいけないなんて緊急のことなんですか。まず原発事故は収束してますか。原因究明もないまま、憲法改悪がそれよりも優先事項だなんてありえない。国防軍反対。みんなの声で、国防軍反対。改憲ストップ、みんなの力で9条守れ。国防軍反対~~!」(火炎瓶テツさん)
「国防軍いらな~い!」「政府は憲法まもって平和 人権 民主主義 活かしなさいっ!!」
表参道の坂を降りる、今回はまだ小規模なデモ参加者。それでも、若い世代の参加者が多いことが、今後の広がりを期待させてくれる。
見事に表現された安倍首相風刺プラカード。「放射能溢れる美しい国~~」「子どもを殺すな!若者殺すな!憲法改悪反対!」
肥田先生はドイツと日本の戦後の反省と謝罪の中身の大違いを指摘する。
「戦後のドイツは、もう死に物狂いでナチスを反省したんです。~~(注:ナチスの警官をやっていた人が)考えてみるとやっぱり俺もヒトラーに使われていたと。心ならずも手伝っていたんだと。申し訳なかったというふうになって、はじめてドイツが変わったんです。そういうことをやらない限り、日本の国はどこまでいったって同じ。また戦争をやりますよ」
◯「主権在民」から「天皇が元首」の国へ
指摘したように、安倍政権は戦後民主主義の柱となっているはずの「主権在民」の価値観を、平然と損なうことに熱心だ。また、310万人の国民の命を奪い、敗戦となったアジア太平洋戦争が、日本による侵略戦争の結末であったという歴史的な事実さえも認めようとしない態度も露骨だ。以下に紹介する安倍首相の持論は加害者としての認識が欠如する。
「A級戦犯は、東京裁判において戦争犯罪人として裁かれたが、国内法的には戦争犯罪人ではない」(第一次安倍内閣当時の国会答弁)と公言。従軍慰安婦問題では、「狭義の強制性を裏付ける証拠はなかった」などと発言。昨年末に首相に復帰後、「慰安婦」問題で政府として「おわびと反省」を表明した河野官房長官談話(1993年)を見直すことを示唆してもいる。
12月の衆議院選挙に先立つ11月には、屋山太郎(政治評論家)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)らがつくる「歴史事実委員会」名で米紙に掲載された、日本軍「慰安婦」問題を否定する意見広告の賛同人として下村博文(現文科相)議員とともに名前を連ねた。
7月には参議院選挙がある。原発推進の反省も謝罪もない自民党が、石原・橋下の「維新」と組んで、3分の2議席を確保したらどうなるだろうか。石原慎太郎は核兵器開発が持論だ。橋下大阪市長・維新の会代表代行は、大阪空襲死没者名簿を保管展示し、侵略戦争の歴史の一旦も展示する「ピースおおさか」の補助金をカットし存続を危ぶませている。安倍政権と維新の会が手を組むのは時間の問題だ。そんな怖ろしい年に新年をしてしまっていいのだろうか。
(1月16日追記:大阪空襲死没者名簿の収集に奔走した空襲による負傷者の伊賀孝子さんの聞き取り記事)
要するに、憲法が保証する「主権在民」を、自民党憲法改正案にあるような、「天皇は元首」=「国の第一人者」にまつり上げ、国民の上に存在するような地位に置き、「国防軍の保持」を明記し、国民主権があいまいな、民主主義国家とは別物に変貌させてしまっていいのかどうかが問われている。
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