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2012年12月23日 (日)

福島菊次郎と愛犬ロク

(写真はクリックすると拡大します)

 脱原発政党が惨敗した衆院選の翌日、福島菊次郎さんに電話した。菊次郎さんは有権者のブレの大きさに驚き、戦争が始まる前の時代に似てきたと言った。

「自民も民主も嫌だから、自分の名前を書いて出そうと思ったが無効になるといわれたので白紙で出した。自民党は長いこと平和憲法を変えたいと思っていた。だが国民を怖れていた。石破はコワイね。戦争をやりたいやつばかりだ。朝鮮半島(韓国と北朝鮮)や中国が日本に持っている怨念を僕らは知っている。安倍らの世代は違う。やっぱり戦争を全く反省していない。日本はまだ戦後を迎えていない。僕もそうだが、アジア蔑視感はまだある。経済が行き詰まった時に戦争が始まる」 

 菊次郎さんが周防大島の借家から、柳井市内のアパートに越してから10年ちょっと経った。無類の犬好きこ菊次郎さんの独居生活に犬はなくてはならない。周防大島時代はシベリアンハスキーのような大型犬を飼うことも可能だったが、狭いアパート生活ではそうもいかない。狭いアパートだからこそ、愛犬がそばに必要なのかもしれない。現在同居する柴犬ロク
2005ロク、2005年。

1999周防大島でミカン畑に囲まれた借家で生活している1999年頃。

_aaa48312010ロク。人間の年に換算すると70歳後半。2010年3月

Dsc_018920062006年9月。アパートの住人が保護してくれた柴犬をロクと思って引き取った菊次郎さん。ところが、愛犬ロクは島の友人に預けておいたので、アパートに戻っているはずがなく、部屋でしばらくしてから、余所の柴犬と判明した。外に出してやると、路地を歩いて勝手に離れていった。

_aaa8999食は細ったが、しっかりと食事は欠かさない。この写真と以下に続く写真は2012年11月の撮影。

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_aaa9080寝る前に頂いた日本酒を久しぶりに飲んだ菊次郎さん。

_aaa9087菊次郎さんが大好きなマウンテンゴリラの写真。圧倒的な存在感にひきこまれるからだと。

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_aaa0361この写真は2012年2月撮影。

 「僕の思想なんて活字を書き始めてできた。巡回展を初めてから写真の説明を全国で50ヶ所くらいやった。できあがった写真を解説するだけだった。ことばを持ったのも巡回展を始めてから。それまでは寡黙。無口でことばは持たなかった。話術はなかったがリアリティのある話はできたと思う。写真を撮り、プリントし、パネルにしてあちこちでいろんな人とのやりとりを経ているから、いまはことばが一人で出てくる」

_aaa9135朝の明るい日差しが差し込んだ部屋。

_aaa9141目を覚ました菊次郎さん、ロクにあいさつ。

_aaa9150散歩と買い物前に目薬をさす菊次郎さん。

_aaa9197近所のスーパーまでのおきまりの散歩コース。ロクは嬉しそうに飛び回りはしゃぐ。
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_aaa9224スーパーの駐車場。

_aaa9261アパートの前で体操をする菊次郎さん。上下の写真。
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 「石原と橋下は両方右翼じゃん。今度の選挙で立ち枯れ(「たちあがれ日本」の意味)と維新の会は、天皇を持ち出したら一足飛びで一緒になる」(石原慎太郎が新党「太陽の党」を結成する前の日の会話で)

_aaa9288朝食はコーヒーにトースト、ミキサーで作る野菜フルーツジュースが定番。ジュースには生卵も入れる習慣が島での生活から続いている。

_aaa9316菊次郎さんは2013年3月、92歳(訂正済み)になる。

 菊次郎さんは最近、台所で転んで左膝を打撲し、腰も痛めたと電話で話した。「独居老人はこういう時は嫌だね」
 結びにこれまで何度も引用している菊次郎さんのことばを紹介したい。総選挙後のいま、多くの人に知ってほしい一言だからだ。

「現代の市民運動に問われているのは、勝てなくても抵抗して未来のために一粒の種でもいいから蒔こうとするのか、逃げて再び同じ過ちを繰り返すのかの二者択一だけである」

菊次郎さんの活字本三部作:「写らなかった戦後」シリーズ(2003年~、現代人文社)
1:「写らなかった戦後 ヒロシマの嘘」
2:「写らなかった戦後2 菊次郎の海」
3:「写らなかった戦後3 殺すな、殺されるな 福島菊次郎遺言集」
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この三部作ではの「ヒロシマの嘘」と「菊次郎の海」の二冊で表紙写真に犬が登場する。

菊次郎さんのことを書いた拙雑記帳、ブログと新聞記事リンク
 なお、菊次郎さんの人となり、生き方、考えを知るには、私が書いたこれまでのを参考にしてください。
2003年8月6日  報道写真家、福島菊次郎著「ヒロシマの嘘」のススメ
2005年7月6日  福島菊次郎さんの緊急講演会が決まる
2005年7月20日 「戦後60年 戦争が始まる」福島菊次郎講演会が大盛況だった
信濃毎日新聞2007年3月5日掲載 報道写真家・福島菊次郎『カメラを武器として』上:人生方向づけた「戦争」
信濃毎日新聞2007年3月6日掲載 中:自ら権力に挑んだ闘い
信濃毎日新聞2007年3月7日掲載 下:抵抗の一粒の種を蒔く
2007年6月25日  福島菊次郎講演会の終了、山本宗補写真展の開始
2008年9月18日  大盛況だった福島菊次郎さんの講演会と写真展
2010年3月25日  松江、柳井、光、祝島、大久野島
2010年8月24日  『遺言 Part3』 福島菊次郎最終講演会in府中
2011年9月25日   反骨の報道写真家・福島菊次郎さん(90歳)のこと

「反骨の報道写真家・福島菊次郎から、フォトジャーナリスト魂を学ぶ」 (朝日新聞発行 Journalism 2013.9 no.280)                    山本宗補(フォトジャーナリスト)


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コメント

ツイッターとFBで紹介させていただきます。戦争で市民一人一人がどのような悲劇をこうむるのか、そのことがとてつもなく風化されている結果、ここまで日本人の大多数が愚かになったと悲しむばかりですが、無力感に浸っていられません。

投稿: 原村政樹 | 2012年12月29日 (土) 23:40

原村さん、ありがとうございます。「無力感に浸ってはいられません」はまさに同感です。今後とも宜しくお願いします。

投稿: 山本 | 2012年12月30日 (日) 23:39

福島菊次郎さんのファンのものです。昨年、映画をみて、本を読んで、深い深い感銘を受けました。ちょっと自由な時間ができたので、菊次郎さんの街にふらりと遊びにきてみました。ばったり会えたらいいんですけどねぇ。記事ありがとうございます。

投稿: 鈴木隆文 | 2013年3月19日 (火) 10:03

鈴木隆文さま

コメントありがとうございます。バッタリ会えたら良いですね。良い天気で何よりです。

投稿: 山本 | 2013年3月19日 (火) 11:58

山本さんへ 度々すみません。山本さんの作成されたパンフレットを、福島さんから頂き、以下にまとめました。

http://ameblo.jp/hirame-sanma/entry-11032483051.html

上の自分のブログの方には、「聞き手=山本宗補さん」って書きました。

公の文章でしたので、載せるのは大丈夫かと判断をしましたが
大丈夫じゃったでしょうか?

もし駄目じゃったら、教えて下さい!

重ね重ね、すみません。 智子

投稿: 智子 | 2013年3月19日 (火) 20:13

智子さま

大丈夫です。本名のまま使ってください。
菊次郎さんのインタビュー内容満載のブログ期待しています。

山本宗補

投稿: 山本 | 2013年3月19日 (火) 20:42

一昨日、府中に福島菊次郎さんの講演会を聞きに行きました。福島さんに最初にお会いしたのは20数年前。周防大島の下田にお住まいの頃でした。私の親の故郷が隣の集落の伊保田で、子どもの頃、夏休みを周防大島の祖母の家で過ごすのが楽しみでした。20代の頃、法事の際に、伊保田で船宿をやっていた親戚から、福島菊次郎という写真家の話を聞きました。犬を連れた風変わりな写真家が「無人島を探している」とある日ふらりとやってきて長逗留していったそうです。その親戚に福島さんの下田のご自宅に連れていってもらいました。昆虫の彫金で生計を立て、ご自身の棺桶を作り、過去の写真について熱く語って下さった福島さんの姿に圧倒された記憶があります。一昨日、府中で講演会を伺い、その時の記憶が鮮明に蘇ってきました。講演会が終わってから福島さんに親戚の船宿の話をすると、すぐに「お元気ですか?当時は宿泊したり、船を貸して下さったりお世話になりました」とお返事頂き、こちらが恐縮してしまいました。福島さんの長年に渡るお仕事を改めて胸に刻みたいと強く思いました。

投稿: 西中誠一郎 | 2013年9月17日 (火) 03:00

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