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2012年9月30日 (日)

福島原発告訴団全国集会~福島原発事故の責任をただす!~

(写真はクリックすると拡大します)

 拙著「鎮魂と抗い~3・11後の人びと」(彩流社)を出してから初めての被災地取材で1週間留守にした。刊行前から決まっていた一時帰宅に同行して取材する機会が二度あり、警戒区域の富岡町と大熊町を久しぶりに回ったきた。その報告は今日はしないが、9月22日にいわき市文化センターで開催された「福島原発告訴団全国集会」の報告をしたい。

 当日は午前中の映画上映から、午後の集会とその後の脱原発デモという一日中のイベントだった。参加者は主催者発表で300人。会場は満席で熱気にあふれた。午前中は西山正啓監督が撮影したドキュメンタリー映画「主権在民」の上映があった。私は別取材をしていたので見逃してしまった。

 午後の部の最初のあいさつは告訴団副団長の佐藤和良いわき市議会議員。
 「一人一人の人間性の回復してゆく大切な闘いの出発点にみなさんが全国からおいでいただいた。11月15日に全国から1万人規模の新たな告訴を全国から行うというのが今日の集会です。原発ムラを叩きつぶすまでみんなでがんばりましょう」

 次ぎの主催者あいさつが武藤類子福島原発告訴団長。その後、たんぽぽ舎の山崎久隆さんによる「福島原発の現状と危険性」の講演が1時間あった。午前中の西山監督の上映後のスピーチから山崎さんの講演までが、主催者のホームページにある動画で全部見ることができるので詳細はそちらをご覧ください。

_aaa1122武藤類子団長の主催者あいさつ。
 「8月ごろから全国を回り、たくさんの方から事務局をやるよといわれ、今は全国10ヶ所に事務局ができました。広がった輪をさらに広げていきたいと思います。そびえ立つように立っている原子力ムラや政府に、小さくてもいいから楔を打ち、日本を変えていくことをみなさんと共にやっていきたいと思います」

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_aaa1167山崎久隆さんの講演。
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◯告訴団の弁護士3人の登場:保田行雄弁護士。河合弘之弁護士。海渡雄一弁護士。
_aaa1170保田行雄弁護士。
 「文科省の賠償指針を読むと、被曝補償の項目がない。福島県民の被曝の問題がまったく考慮されていない。今回は被曝の問題を中心にすえて運動していこうと告発ではなく、告訴に踏み切った。業務上過失致死罪で告訴していく。福島県民1324人が告訴に立ち上がった意義は大きい。
 県立医大では山下教授が陣取って被曝の原因はないと言っている。山下氏が長崎で去年出した本、「正しく怖がる放射線の話」の内容にはこうある。『戦後国内最悪の原子力災害において、とくに福島県において放射能汚染とともに新たなヒバクシャを生み出した』と書いた。彼らは真相をかなり深刻に受け止めている」。
 「検察庁に本気になって捜査をさせるかどうかが重要。これからの国民世論にかかっている。11月の全国の集団告訴が成功するかどうかにつながっていく」

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_aaa1198保田弁護士。

_aaa1234河合弘之弁護士。

 「東電の役員は誰も引責辞任をしていません。これは正義に反すると感じています。こういう大きな事故が起きた時には、まず真実を追及し、責任者を罰するところから全てが始まらないといけない。東電役員たちの民事上の個人責任を追及すべきと、42人の東電株主とともに、5兆5046億円の損害賠償をしなさいと。去年株主賠償訴訟をしました。東電役員は肝を冷やしている、全ての財産を失うかもしれないという恐怖の中にいます」

 「訴訟は困難ですが、最大の武器は各事故調の調査報告書です。みなさん告訴人になるからにはアンチョコだけは読んでほしい。国会事故調は、電力の事業者と規制する側の安全委員会の共謀による『意図的先送り』によってこの事故が起きたといっている。意図的ということは『業務上過失』ということ。先送りは『不作為』ということ。行政は事業者の虜となっていたと分かり易く非難している。これを否定するのは検察にも難しい。告訴を闘う武器を私たちは手にしたといえる。目の前の霧が晴れてきた」

「起訴までもっていくのだ大事なことが二点ある。国民の怒り、被害者の怒りを検察官に肌でわからせること。1324人が告訴したことは意味がある。さらに日本中の国民が怒っていることを示すためには全国の告発団を構成して、何万人もの告訴人が告訴状を出し、市民としての怒りを検察に示していくことが大事」

_aaa1270河合弁護士が自ら作った原子力ムラ相関図。
「経済の6割から7割を占めるほど原子力ムラは強大。この構造を崩さない限り原発は止まらない」

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_aaa1239海渡雄一弁護士。

 「弁護士32年目。10数件原発訴訟をやってきた。たくさん負けてきた。今回の事故に直接つながる悔しい判決が二つあります。一つは「もんじゅ」訴訟。名古屋高裁金沢支部で完全勝訴した。それが無惨にも最高裁で逆転敗訴。今回の悲劇に直結しているのが浜岡原発の静岡地裁判決。忘れもしない2007年10月26日。石橋克彦先生は法廷に入らなかった。嫌な予感がすると。みんな勝つと思っていました。だけど負けてしまった。めっちゃくちゃな判断でした。判決直後の石橋先生のコメントが忘れられない」

『この判決が間違っていることは自然が証明するだろうが、その時我々は大変な目にあっているおそれが強い』

 横で聞いていて鳥肌が立つ思いをした。(海渡さんは声がうわずった涙声で)あの裁判で勝てていれば、全国の原発で地震と津波対策が進んだのではと思う。福島の事態を食い止められるはずだったのに食い止められなかった」

 「日本の近代史に類例を見ない怖ろしい企業犯罪の実態を、法廷で明らかにしていきたい。できたら検察の手で刺させたい。検察審査会の手で法廷に持ち込むという手が残っている。3人目の弁護士ですがご一緒させてください」

_aaa1275全国に組織された告訴団各支部代表のあいさつと抱負。

甲信越事務局。関東事務局。北陸事務局。関西事務局。静岡事務局。中部事務局。東北事務局。中四国事務局の各代表が壇上であいさつした。

◯集会アピール→→→主催者のホームページに全文が掲載されています。以下は冒頭の引用:
 「おびただしい被害を出し、命を傷つけ、かけがえのない自然環境を破壊しながら、この未曾有の原発事故でなぜ誰も責任を問われないのか。
 こんなあからさまな不正義、不条理が目の前で起こっているのになんの手も打たれない日本は本当に法治国家なのか。
 当たり前の正義が通る社会にしたい_そんな思いから、2012年3月に生まれた福島原発告訴団は、1324人の告訴人を集め、6月11日に第1次告訴をしました。・・・・・・」

◯閉会のあいさつ:石丸小四郎副団長。
 「第一と第二の間に50年住んできました。東電城下町に等しい所で思ってきたのは、原発ほど不条理で、理不尽で、世代間不公平があり、差別的なものはない。この4つの言葉が数千倍にふくらんで私たちに襲いかかってきています。4つの言葉は「原発さえなければ」と書き残して自死した酪農家にも共通することばだと思います。
「加害者極楽被害者地獄」 このことばは許すことができません。残りの人生の全てをみなさまと共にこのことばを許さないとの原点で闘っていきたいと思います」

◯脱原発デモ(いわき文化センターからJRいわき駅まで)
 デモ参加者は100名ほどに激減した。事務局スタッフは片づけなどで参加できなかったようで、全国から参加した人は帰宅の時間が迫っていたためだろうか。

_dsc5999右端が告訴団副団長の石丸小四郎さん。
_dsc6051最前列左端が告訴団副団長の佐藤和良氏。
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◯結びに河合弁護士のコメントを引用しておきたい。
 「経済の6割から7割を占めるほど原子力ムラは強大。この構造を崩さない限り原発は止まらない。福島原発事故によって9分の1が崩れただけ。最後は政治を変えるしかないと思う。
 『原子力基本法(国策とするという宣言が書いてある)』を廃止して、国策として脱原発基本法を作り、それをリトマス試験紙にして次ぎの選挙でこれに賛成か反対かを問い、賛成の人だけを当選させていく。首相が変われば法律が変わる。国策として脱原発にしないとダメなんです。
 仮に閣議決定しても自民党政府になったら全部おじゃん。このまま選挙したら自民党勝っちゃう。今まで積み上げてきたものがみんなおじゃん。それを食い止めるには、これまでの成果を法律によって固定化していかないといけない」

 

 

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