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2012年8月 9日 (木)

牛を生かし続ける意味を考えることは哲学の世界(「希望の牧場」の吉沢正己さん) Yoshizawa Masami 's deep thought about why I am saving lives of cattle.

(写真はクリックすると拡大します)

 吉沢正己さん(58歳)は、精神の強じんで柔軟で繊細な人だと思う。

 浪江町の牧場で会うよりも、このところ二度続けて都内で会う機会ができて不思議な気もするが、吉沢さんが原発事故後からこれまでに歩んだ一日一日の大変さを改めて思った。いま、吉沢さんの一言一言がよどみなく出てくるように聞こえるが、そのどれもが、300頭をこす牛たちを生かすためにクリアしなければならなかった日々の連続から生み出されたことばだ。

 日々、自らが被ばくし続けることを前提に続いてきた、牛飼いとしての意地と誇りにかけた、東電と国に対する怒りと抵抗のシンボルとして牛たちを生かし続ける意味。人間を棄民することに抵抗するように、動物を棄畜することに抵抗する生き様。見えない答えを追い求める、吉沢さんがいう、日々哲学するような営みなのかもしれない。それは言葉による意味づけよりも、行動で始めて理解される世界なのかもしれない。
 
 理屈はここまでにして、前回取材の写真と、先日、都内で行われた「希望の牧場」関係のイベントの写真を読者と共有したい。

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 実は牧場の全ての牛が下を向いてエサを食っている光景に驚いてしまった。というのも、昨年末から見慣れた光景は、牛がロール状の乾燥エサやモヤシかすをぱくつく姿ばかりだったので、放牧された牛が牧草をはむ本来の光景が新鮮だったからだ。
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_aaa8626こちらは見慣れた光景。身体の大きく強い牛が、エサを好きなだけ食べてしまう、増えすぎた牛たちの「自然淘汰」に近い現状。

_aaa00836月末に牧場の入口まで案内した佐々井秀嶺師一行による、原発事故で死んでいった多くの牛に対する供養の読経。佐々井師は大津波被災地での供養のために、昨年に引き続きインドから帰国した。インド在住47年。インドでは、ヒンドゥー社会におけるカースト制によって続く人間差別に抵抗し、下層民衆の仏教への集団改宗を導く活動を続ける。世界中の仏教徒の聖地である、お釈迦様が悟りを開いたブッダガヤに建つ世界遺産・マハボディ寺院(大菩提寺)の管理権をヒンドゥー組織から仏教徒の手に取り戻す闘争も長年続けてきた人物だ。_aaa0111

_aaa8551M牧場の種牛第一号、最強で最長老の「繁重」(シゲシゲ)。去勢される数日前。

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_aaa8609希望の牧場のブログやTwitterへの書き込みが気になる吉沢さん。
_aaa86584㌧トラックの燃料タンクの交換品を専門店で購入。
_aaa8659タイヤのパンク修理に修理工場へ。
_aaa8763運搬車に取りつける鉄枠の調整作業。
_aaa8681ガタがきたトラックの修理には根気と時間がいる。畜産家は何でも屋でなければならないのかもしれない。

_aaa4901都内の希望の牧場討論会では哲学者の顔?も見せる。運命の北西方向への風によって大量に拡散し雨雪で放射性物質が降下した浪江町の線量マップを見せる。(7月28日)

_aaa4848原発事故により日本中に運ばれ土壌汚染したセシウムの濃度を表す地図。この日解説した岡田啓司准教授によるプレゼンから。
_aaa4907希望の牧場公開討論会(7月28日、渋谷のセミナー会場)

_aaa4821エム(M)牧場社長の村田淳氏。村田社長の話しで、原発事故時に浪江農場は、福島県内に7ヶ所ある牧場の一つだと初めて知った。ただし、頭数は最大規模。

_aaa4932「希望の牧場」サポーターのみなさんと吉沢さんにスタッフさんたち。
_aaa4921いわゆるKMG(希望の牧場見守りガールズ?)のみなさん。ほんとうに動物好きの熱いサポーターさんたち。
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 ちょうど8月4日から畏敬する報道写真家福島菊次郎さん(91歳)のドキュメンタリー映画「ニッポンの嘘」が封切りされたばかりだ。予告編で大きな話題になり、封切り後の反響もスゴイが、菊次郎さんのぶれない生き方と、吉沢さんの闘いがダブって見える。
 菊次郎さんは広島原爆を6日間の違いで免れ、戦後は広島の被爆者の無念を極限まで取材して写真集にして伝えた。全共闘運動、三里塚闘争、自衛隊と兵器産業など、余すところなく取材し報道した伝説的なジャーナリストだ。自らの体験もふまえ、昭和天皇の戦争責任を問う姿勢を貫いた。いわゆる「下血報道」が過熱する時に、自らは胃ガン摘出手術で入院中の身でありながら、「このままトンズラされてたまるか」と、膨大な写真パネルを制作して全国に巡回する写真展を実施した人だ。

 畜産家・吉沢正己さんは、原発事故を招いた東電と国が、故郷の浪江町、福島県の一部をチェルノブイリのように、二度と帰ることのできない大地にした責任を、今もって問われることのない不条理に対し、黙って泣き寝入りはしない、せめてもの抵抗はするぞという意思で生きて来たといえる。言い方を変えると、「このままトンズラされてたまるか」にほかならない

 逆境で人の真価が問われている。同時に「3・11後」の私たち自身の生き方も問われている。


 

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東日本大震災(原発事故・放射能汚染)」カテゴリの記事

コメント

 吉澤氏の生き方を正面から受け止めて書かれている山本様、ありがとうございます。
 満州からの引揚を体験した亡き母は、敗戦後の混乱期に、人々のために奮闘する男性達は、多くの場合、戦争中に威張っていた人達ではない、と言った言葉を、3.11後から今までの日本男性の言動を見ながら、いつも納得しております。
 女性達も、3.11前と後では、男性に求めるものが、何が最も大切なのか、はっきりと見えてきているのではないでしょうか。
 それが、この悲しい現実の中で見えている、日本の”希望”であると思います。
 

投稿: 黒坂三和子 | 2012年8月10日 (金) 04:40

黒坂さま

深読みしていただいたコメントをいただきありがとうございました。

原発事故で人生がめちゃめちゃに壊されながら、そこで踏みとどまって、強者に泣き寝入りすることなく、東電や国や行政に抵抗をする男も女も、原発事故前の生き方が自然とにじみ出てくるような気がします。

投稿: 山本 | 2012年8月12日 (日) 19:19

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