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2012年3月 5日 (月)

除染:東電と国の無責任に耐えかねて除染ボランティアを始めた住職

(写真はクリックすると拡大します)

 まず、取材に協力していただいたみなさまに掲載が遅れに遅れてしまったことをお詫びしたい

◯つるりん和尚こと阿部光裕(曹洞宗)常円寺住職
_aaa0177「つるりん和尚」こと阿部光裕常円寺住職の除染作業前の支度。福島市立岡山小学校。2月5日

_aaa0185高圧洗浄機の使い方の手本をボランティアにして見せる、阿部光裕常円寺住職。ポイントのひとつは専用の洗剤を散布してしばらく放置してから洗浄機を使うこと。ゴーグルとマスクとカッパの装備が基本。

_aaa0384a福島市岡山小学校の除染に集まった県内外からのボランティアのみなさんと、除染道具。小学校の先生方も参加した。

 福島県中通りの除染は、国のあいまいな基準と対応策に結果的には住民が翻弄され、自ら除染と仮置き場を見つけださざるを得ない悲しむべき現実が根底にある。様々な事情から地元に留まることを選んだ大半の県民市民。行政の除染を待っていてはいつになっても足元の放射線量は下がらない。保育園や幼稚園、小学校や中学校に子どもたちが日々通う現実に対応するには、住民自らが除染を率先して手がけるしかない。汚染土を県も市も仮置き場を用意しないむごい現実を前に、自分たちで仮置き場を設置するほかはない。

 以下は福島市東部、 地区での、仏教寺院の住職が住民の苦悩を見かねて、自ら汚染土を預かる仮置き場を山中に設置し、ボランティア組織を立ち上げて、除染ボランティアを始めた事例だ。阿部住職は三人の子どもがいる。地元に留まる選択肢を選んだ子どもたちと共に暮らす以上は、地元の線量が高いまま放っておくことはできないと昨年から除染に取り組み始めていた。

◯福島市岡山小学校(阿武隈川東岸の東部地区)の除染作業(2月5日)
_aaa0327福島市立岡山小学校の門柱前の空間線量は毎時0.5マイクロシーベルト以上。首都圏であれば、保護者が大騒ぎとなる線量だが、福島市内では一般的な線量といえるほど基準が高止まりしているのが現実だ。加えて、岡山小学校は渡利地区同様に空間線量が3マイクロシーベルト前後だったため、昨年6月に校庭表土の除染が実施されていた。幼稚園が隣接することもあり、半年以上たっての再度の除染が欠かせなくなったといえる。

_aaa0294ボランティアには県外からの参加者の方が多い。30代もいるが、メインは40代~50代。県外者は2度目3度目の参加者が多い。「若い女性にはハードな作業なのでオススメはしません」とスタッフの弁。ボランティアは被曝の心配から40代以上が望まれ、20代の女性はお断りしている。

 実際、かなりの肉体労働だ。ブラシでごしごしこすり、スコップで泥をすくい上げて袋に入れる。参加者の負担を減らすには人海戦術が欠かせない。

 東京から土日を利用して参加した出版社の仕事をしているという46歳の男性は線量計も持参。「市民が自ら動いているところを手伝いたい。一人でも頭数が多いと役立てる。不安要素を少しでも取り除ける」。男性は南相馬市でガレキ撤去や草刈りなどのボランティアを10回ほどやってきたと話した。

 この日のボランティアは18人。大半が首都圏からの参加者で地元は3人だった。2度目3度目の参加者が多い。

_aaa0362排水路の除染前と除染後の線量が測定されて記録される。測定方法は主に直置きで50cm~1m間隔で計測し、ホットスポットを見つけだし、重点的に除染。効果のほどが確認できることが重要。

_aaa0225森林管理のプロも参加して枝木の選定と伐採も除染に欠かせない作業という。

_aaa0369除染で集めた汚染土は軽トラで常円寺の裏山に設置された仮置き場に運ばれる。

_aaa1573阿部住職は、近所や檀家から運び込まれた汚染土を寺の裏山の空き地に預かる仮置き場を設置した。少しづつ預かった汚染土が増えていく。除染ボランティアで取り除かれた汚染土もここに運び込まれて、仮置きされる。「行政をやる気にさせる方法のひとつ」と阿部住職。2011年12月撮影
_aaa1590汚染土の線量を計ると、私の線量計は毎時8マイクロシーベルトを示した。住職のものは毎時10マイクロシーベルトを示したが、いづれにしても高いことは間違いない。同12月撮影

_aaa0005ボランティアが寝泊まりする部屋で除染作業前の打ち合わせ。常円寺にて。

◯つるりん和尚のブログ「つるりん和尚のああいえばこうゆう録」より(1月26日)
「国が計測に入っても、玄関先と庭の中心部分の2地点のみ。それも、相変わらず地表から50㌢と1㍍です。

町会毎に線量計は配られていて、心ある役員さんなどが測りにくることもあるようですが、とても正しい計測がなされているとは思えません。そもそも、空間線量を計測することはそんな生易しいものではないからです。

事故後、1年が経過しようとしている中で、およそ信じがたい現状です。勿論、土壌検査にいたっては調査など無いに等しい。

結論から言うと、行政はこうした事実と向き合うのが怖いのです。ホットスポットが数多く存在することは知っていても、実際に自分たちが計測すると、それを除去しなければいけない責任が生じる。しかし、置き場もない上に、人手も足りない。一軒やれば次々と頼まれることになり、断ることができなくなる。

しかし、そこから目を背けては現実に脅威を取り除くことはできないのです。いわんや、通学路ならなおさらです。
結果、住民、殊に子供たちの未来に影を落とすことになるのです」(引用了)

◯福島市役所東部支所での除染講習会(2月4日)
_aaa0210福島市内阿武隈川東部の町会長さんたちが参加した除染講習会。講師としてウクライナ製線量計の使い方を説明する阿部住職。

_aaa0186福島市役所東部支所での除染講習会で、20町会の町会長らに除染方法の講義をする阿部住職。

_aaa0263参加した町会長さんたちに高圧洗浄機の使い方を実演。「やる気にさせる。楽しくやって見せる。結果で出ることを見せる」のがポイントと住職。市からは50万円の除染補助金が各町会単位で出ることになっている。線量計も高圧洗浄機は希望する町会に貸し出し、住民自らが除染作業をすることになる。

_aaa0387東部支所の前の水路沿いの通学路で除染の実演が行われた。前日までに測定されたミニホットスポットの数値が路面に書き出されている。毎時20マイクロシーベルトをこえるスポットもある現実。

_aaa0381マイガイガーカウンターで測定しても毎時20マイクロシーベルトをこえる。水路沿いの雨水が水路に流れ込むと思われる場所が高い数値を示す傾向。

_aaa0409午前中で予定していた除染を終え、お昼はカレーライスが無償で提供された。(2月5日)

_aaa0084菜の花の種。阿部住職が立ち上げた「福島復興プロジェクトチーム『花に願いを』」が希望者に配る種。活動についてのwebはこちら。活動の主旨は、汚染された福島の大地の浄化を願い、草花などを利用した手段や表土除去など、考えられる方策を速やかに検討し実践すること。活動報告公式ブログ「人生は365歩のマーチ」はこちら。

つるりん和尚のブログからの引用(1月12日

よく「除染ボランティア」に否定的な意見を言う人がいて、その中でも「無用な被ばく」をさせようとすることが許せないという意見が多い。しかし、仕事として除染作業に従事する人たちが大勢いるわけで、仕事ならしかたがないとでも言うのだろうか。

少なくとも、多少の被ばくを覚悟してでも社会的責任を果たそうとしている人を外部から批判だけする人を私は軽蔑する。私は、除染ボランティアに来られる人たちと直におつきあいさせていただいて、本当に頭が下がるのだ。

しかし肝心の福島に住む人たちの参加者、特に除染重点地域などの住民の協力がなかなか得られないことは深刻な問題だ。ともすると、ボランティアの人にさえ敵対心を持つ人もいる。これを私は「恥ずかしい」ことだと思う。

確かにこうした状況に置かれた住民にとって、除染に参加しなければいけないのは理不尽であると思う。
が、現実を直視するならあれこれ不満ばかりを言っている時ではない。

「人手が足りない」ことを、とにかく自覚することが先決だ。そして、真実の意味で原発事故に向き合おうとする強固な意志を持つのだ。長い道のりを覚悟して、頑張りすぎず、しかし諦めず、までいに、行動していくことが真の復興に繋がると信じたい。」(引用了)

 県外から除染ボランティアに来て熱心に除染に取り組む姿を見た東部地区町会長さんたち。阿部住職は地元住民のやる気を引き出し、行政の協力姿勢を引き出し、「理不尽」だとわかっていても被災住民たちが線量の高い現実に向き合う決断をうまく促していた。もういうまでもないが、つるりん和尚のブログは本音のオンパレードだ。これを機会に読み続けてほしい。

◯取材後記
 地元住民の除染活動の後押しを始めた「福島復興プロジェクトチーム『花に願いを』」。スタッフの地元の若い女性が話してくれたことばが印象に強く残っている。

「放射能は闘って何とかなる相手ではないとは思うけど、地元に留まる決断をした以上は、線量を減らす努力を続けるしかないと思う。みんな不安一杯で生活している。除染で安心して生活できるレベルに下がらないとしても、除染をやることで不安やストレスの低減につながっているのではないかと思う」

 原発から60㌔、70㌔離れた福島市、二本松市、郡山市などの中通りの人口が密集する市街地。そのあちらこちらにホットスポットが点在し、見えない放射性物質とのいたちごっこが繰り返されようとしている。東電の原発事故がまき散らした放射性物質の後始末を、スピード感のない、住民の不安に聞く耳を持たない国や県の政策に期待できないために、被災者自らが除染に取り組むことの不条理をメディアはもっともっと伝えなければいけない。

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コメント

阿倍さん所には2回目のボランティアでした。「除染」というのは有害な放射性物質を拡散しないようにまとめて長期に保管、管理することだと認識しています。まとめられるのかどうかが大きな課題です。無害化はさらに難しいと考えています。
 3月3、4日といわき市に「援農と農民の交流」という「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」主催のツアーに参加しました。「オーガニックコットンプロジェクト」の予定地も見学しました。Jヴィレッジや被災地を3日に見て回りましたので積算の被曝量は12μSvでした。主催者にもこの数値は報告しますがかなり高いcです。私自身は福島原発行動隊の隊員で被曝も覚悟していますが一般の参加者はどう捉えるのか、議論の余地は
あると考えています。
 一方、農民との交流は勉強になりました。4月11日の余震で水が出なくなっていますがそれを乗り越えて第一次産業から第三次産業までの一貫産業での復興を具体的にめざしています。
 今年は試験的に綿の栽培に取り組むそうです。種蒔きは5月に。収穫は11月だそうで、援農をお願いされました。

投稿: 杉山 隆保 | 2012年3月 9日 (金) 11:33

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