毎時275マイクロシーベルトの双葉厚生病院玄関口。警戒区域の現実1(双葉町)
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政府は3月に予定される警戒区域や計画的避難区域の見直しに向けて、区域内の放射線量の全体像をつかむため、改めて地上から1メートルの放射線量の測定を行う予定。年間放射線量に応じた3区域に再編予定で、現時点の年間50ミリシーベルト以上は「帰宅困難区域」と定め、不動産の買い取りなどを検討すると報道されている。
原発事故によりストロンチウムやプルトニウムが広範囲に飛び散っていることは文科省が昨年9月公表した既知の事実だが、地上1mの空間線量測定だけでなく、広範囲で徹底した土壌検査が改めて不可欠ではないだろうか。なぜならば、20㌔圏内には異常に高い線量の場所が私が測定しただけでもあちこちに存在するからだ。今回はテレビ新聞などの大手メディアが熱心に伝えようとしない警戒l区域内の現実を写真と線量データでみなさんと共有したい。なお、写真は1月末から2月はじめにかけて撮影したものです。
1号機と2号機、3号機は見えるが、2号機は1号機のカバーの影になり、このアングルでは見えない。
「原子力明るい未来のエネルギー」 双葉町厚生病院近くにある標語。
双葉厚生病院玄関。この場所は、原発事故後の3月13日に、JVJAの仲間4人と広河隆一デイズジャパン編集長の計6人で取材に入って以来なので約11ヶ月ぶりだった。医療ベッドが散乱した状態はそのままだった.。空間線量は毎時18マイクロシーベルト。地震でひび割れ陥没した玄関先の路面で測定してみると、何と毎時275マイクロシーベルトを超えた。昨年6月に使用中の線量計を入手後、最大の測定値となってしまった。
事故後の3月13日に、双葉厚生病院前での取材中の動画はこちらにあります。「3・11メルトダウン 福島原発取材の現場から」Part2 3台の線量計の針が振り切れ、毎時1000マイクロシーベルト(1ミリシーベルト)をこえてしまったシーンも収められています。ご覧ください。 撮影はビデオジャーナリストの綿井健陽氏。
また、大震災発生後に初めて取材した写真はこちらのブログでご覧ください。「原発事故、放射能、地震、津波という未曾有の複合災害」
双葉厚生病院のはす向かいに建つ東京電力長塚第二独身寮。表札看板の高さでの空間線量は毎時13マイクロシーベルトだった。
双葉町役場手前の原発推進アーケード。「原子力郷土の発展豊かな未来」。
役場前に広がる水田はどこも外来種の雑草として悪名高いセイタカアワダチソウの天下となった。
請戸港近辺の船やガレキ撤去は手つかず状態。空間線量は毎時0.30マイクロシーベルトと低め。
確かに双葉町の海岸近くの線量は若干低めだが、野田首相の原発事故「収束宣言」に反し、いつまでも収束しない原発に近すぎるだろう。次回に取り上げる浪江町に取り囲まれていることからも、双葉町全体が除染すれば帰れるところだとは思えないのが実感だ。
「警戒区域の現実2」は浪江町と南相馬市の取材を紹介します。
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コメント
私は現地が、今どのような状況になっているのか知りたいと思っていました。
山本さんの取材は、それに十二分以上に答えてくれるものです。ただ、実際記事に書かれてあって再確認できましたが、そこの放射線量はとても高いという事実。私の住んでいる所では毎時0,025から0,045マイクロシーベルトほどです。
体のことも十分気をつけての取材だと思いますが、安全第一でやって下さい。
戦場などとは違うかも知れませんが、命がけの取材であることには違いないと思います。
ほんとうに貴重な報道を有難うございます。
投稿: 風の三郎 | 2012年2月 9日 (木) 09:05
風の三郎さま
ありがとうございます。
誰もが取材できる場所ではないところで取材するフリーランスも大手メディアのスタッフも、そこで取材し広く伝えなければならない内容については、等しくできるだけ伝える役割と義務があると思っています。
もちろん安全第一で取材していますが、放射能という目に見えない、臭いもない相手に対しては、取材慣れが怖いと感じています。
肉体を内側から蝕む放射線の影響は数年後に顕著になってくる可能性が高いと指摘されているわけですから。
いづれにしても、現状が伝わらないために無駄で無謀な「除染」に過剰な期待を持ち続けるマインドを生んでいると思うので、微力でも取り組んでいるわけです。
投稿: 山本 | 2012年2月 9日 (木) 23:53