原発事故から9ヶ月:福島県内取材地の放射線量比較写真(目安用)
(写真はクリックすると拡大します)
◯毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域は国の負担で除染
「除染のルール定めた省令が公布された」というNHKニュースを引用してみたい。「国が財政負担をして除染を行う地域を放射線量が1時間当たり0.23マイクロシーベルト以上の地域」と定めたようだが、具体的にはどの辺りを指すのだろうか。12月4日から11日までの取材地で測定したので目安になると思う。
地元の住民にとっては既知のことなので価値はないかもしれないが、福島県に足を踏み入れたことのない人には大ざっぱな目安にはなるだろう。写真は移動した順番で、いわき市、南相馬市、浪江町、飯舘村、郡山市、福島市、会津若松市、それに宮城県石巻市という流れ。
なお、一言断っておくが、ここに紹介する写真と線量は今回の取材で通った場所に限定されている。つまり、福島市内のホットスポットである渡利地区とか、郡山市内の1~2マイクロシーベルトをこえるホットスポットや、いわき市内とその周辺のホットスポットなどは含まれていません。言い換えれば、ここで紹介する数値は、平均的な低さてもこれだけ高い、という意味にとっていただく方が無難だと思います。事故前の平常値を仮に0.05マイクロシーベルトとして比較してみれば一目瞭然ですから。
ちなみに、毎時0.6マイクロシーベルトをこえると、放射線管理区域(放射線による障害を防止するために法令で設けられた区域。具体的には3ヶ月間で1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域)に設定されなければならないはず。
「原発事故で広がった放射性物質を取り除く除染や、放射性物質が付着したがれきなどの処理を行う際の具体的なルールを定めた国の省令が14日、公布されました。
除染や、放射性物質が付着したがれきなどの処理については、来年1月に施行される特別措置法で、国と自治体が役割を分担して行うことが規定されています。公布された省令は、作業を行う際の具体的なルールを定めたもので、13日に専門家の審議会で了承されました。このうち除染については、国が財政負担をして除染を行う地域を放射線量が1時間当たり0.23マイクロシーベルト以上の地域としています。また、実際の除染の場合、土は表面を削り取ったり、外側と内側を入れ替えたりすることや、草木は落ち葉を取り除いたり、立ち木を伐採したりするなど対象物ごとの方法も細かく決められています。省令の公布を受け、環境省は除染を行う地域として東北や関東の100以上の自治体を来週、指定する予定です。省令には、放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超えるがれきや汚泥を国の責任で処理することも定められており、これによって除染や、がれきなどの処理が本格的に進められることになります」(NHKニュース 12月14日)
大津波で流された住宅街の瓦礫を集めた山。いわき市豊間(12月4日)
破壊され流された墓石は手つかず状態。海水浴場のあるいわき市豊間では、85人が大津波の犠牲となったと、家は流されたが助かった住民の方が話してくれた。
大津波で流された住宅跡で。毎時0.19マイクロシーベルト。いわき市豊間。今回の取材で回った場所では最も低い数値。原発から南へ48㌔。
・リンク:いわきの子供を守るネットワーク
警戒区域内に取り残された犬。(南相馬市小高区、12月5日) 原発から北北西に15㌔。
殺処分された牛の埋葬地。毎時3.2マイクロシーベルト(同、南相馬市小高区)
「希望の牧場」ゲート脇に置かれたブルドーザー。「決死救命」とペイントした牧場の吉沢正己代表。原発から北北西に14㌔。
肉牛300頭以上が生かされている「希望の牧場」。毎時6.1マイクロシーベルト。(南相馬市小高地区・浪江町境界)
300頭をこえる牛たちは牧草だけでは生き延びることができない。定期的にエサをやることも必要だ。
大津波で国道6号線まで流された漁船の修理が始まっていた。(南相馬市鹿島区鹿島港、12月6日) 原発から北へ29㌔。
毎時0.28マイクロシーベルト。(同鹿島区、国道6号線脇)原発から北へ29㌔。
自宅のある小高区が警戒区域となったため、仮設で避難生活するおばあちゃんと支援物資を届けにきた地元ボランティアさん。(南相馬市原町区桜井町仮設住宅) 原発から北へ26㌔。
写真奥に見える仮設住宅敷地内は毎時0.35マイクロシーベルトだが、道路挟んだ水田側は毎時0.9マイクロシーベルト前後と高め。南相馬市鹿島区小池。原発から北へ31㌔。
6月からは原乳を出荷している酪農家・瀧澤昇司さんの牛舎(南相馬市原町区馬場、12月7日)。原発から北北西へ22㌔。
瀧澤さんは近所の水田を借りて自家用の牧草(えんばく)作りに力を入れている。猛烈なスピードで刈り取るのが快感なようだが、刈り取っても線量が高いのと、土壌検査でエサとしての使用は自粛するように指示されている。毎時1.24マイクロシーベルト(同原町区馬場) 同22㌔。
飯舘村役場の線量計と並べて測定。ほぼ似たような数値。毎時2.5マイクロシーベルト。ちなみに6月23日の測定では毎時3.6マイクロシーベルトだった。原発から北西39㌔。
袋に詰められた落葉の表面は毎時7.2マイクロシーベルト以上。
飯舘村南端の長泥地区に至る山道には雪が積もっていた。毎時13.3マイクロシーベルト以上。原発から北西へ32㌔。
飯舘村と浪江町の境界に近い山道。毎時8.2マイクロシーベルト(12月8日)。6月23日の測定値は毎時10.9マイクロシーベルトだった。原発から北西へ31㌔。
車内でも毎時12マイクロシーベルト。(浪江町津島の国道399号線)同北西へ30㌔。
浪江町津島の国道399号線沿線で最も高い空間線量のスポット。毎時20マイクロシーベルトをこえる。同北西へ31㌔。
郡山市内の墓地。毎時0.5マイクロシーベルト。原発から西へ59㌔。(12月9日)
全国どこにでもあるような地方都市の一こま。郡山市内(駅に近い)。線量計で計らなければ、誰の目にも異変は感じられない。計ってみると、毎時0.44マイクロシーベルト。東北道に乗る郡山IICまで数カ所で測定したが、平均して0.5マイクロシーベルトの数値。平常値の10倍はある。原発から58㌔。(12月9日)
郡山市内の道路端。雨水が集まるようなスポットは確実に高めの線量を示す。毎時7.6マイクロシーベルト。
郡山市内、ケーズデンキ駐車場入口の生け垣上。毎時1.5マイクロシーベルト。原発から西へ59㌔。
郡山市内、希望ヶ丘幼稚園の国道側歩道上。毎時0.6マイクロシーベルト以上。原発から西へ61㌔。
郡山IC近くのコンビニ駐車場の窪地。毎時5.1マイクロシーベルト以上。
・リンク:ふくしま集団疎開裁判の会
福島市北沢又愛宕神社敷地。毎時0.98マイクロシーベルト。枯葉の集まる表面では毎時2マイクロシーベルトをこえる。ところが隣り合うセブンイレブンの駐車場(下の写真)は毎時0.58マイクロシーベルト。これは一種のまやかしで、舗装された場所は雨などで流されて低い数値だが、郡山市内で見たように、雨の溜まりやすい所、草地や植木などはのきなみ高め。原発から北西へ69㌔。(12月9日)
・リンク:子供たちを放射能から守る福島ネットワーク
支援物資を受け取る大熊町からの避難住民。会津若松市内。(12月10日) 原発から西へ98㌔。
会津若松市、鶴ヶ城お堀端。毎時0.24マイクロシーベルト。草の上は0.26マイクロシーベルト。(12月10日) 同98㌔。会津若松市内も除染が必要ということか。
こうして見ると、今回の取材で回ったところで、国の除染負担対象外は、いわき市豊間だけとなる。「環境省は除染を行う地域として東北や関東の100以上の自治体を来週、指定する予定」というが、「放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超える」瓦礫や汚泥を含めたら、福島県外でもで指定される必要のある自治体が続々と出てくるのではないか。
以下は宮城県石巻市だが、平常値に近い数値として比較することで、福島県各地にどれほど放射性物質が広範囲に拡散しているかが想像しやすいのではないか。同時に、原発事故のために、大津波の被災地の復興が遅れに遅れていることを忘れないでほしい。
宮城県石巻市門脇の大津波被災地。毎時0.12マイクロシーベルト(12月11日)。
原発から北へ113㌔。
◯蛇足:西南西に246㌔離れた私の母校(長野県軽井沢高校)も安全圏ではないことが判明した。校舎の雨樋の下の側溝にたまった砂の真上で測定すると、毎時3マイクロシーベルトに近い数値となった。(10月25日)
長野県軽井沢町から佐久市の群馬県境には、確実に放射性物質が降りそそいたことが明らかとなった。10月に佐久市の県境付近山中で採取された野生のキノコは基準値をこえる放射性セシウムが検出された。そうしたこともあり、落葉をもやすことも長野県内全域で自粛要請されているのが現実。
◯3月に測定した被災地各地はこちら→→→「写真で見る被災地の放射線量比較2011年4月19日 (火)」
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