稼働57年の水車発電(小水力発電所)を見た
再生可能エネルギーの中でも、古くから利用されている水力発電。大規模な環境破壊のイメージとは全くことなる「小水力発電」という分野の実用例は、知られていないか、活用されていないだけで潜在的実用化は幅広い。そこで身近な平根水力発電所を紹介する。出力が数十~数千キロワット程度の小型の水力発電を総称して「小水力発電」と呼ぶという。
我が田舎の隣町である佐久市に50年以上前から稼働し発電している水車発電所を見学してきた。場所は佐久市平根。平尾山の北側斜面にあるスキーガーデン「PARADA」近くにあり、浅間山系を水源とする湯川の脇にあった。湯川から取水した農業用水を利用し、湯川に放流する。湯川は我が御代田町を流れ、この地点から数㌔下流で千曲川に注ぎ込むので千曲川の支流の一つだ。
佐久市農業協同組合自家発電所の看板のかかる平根発電所。平屋の建物も木造で古いまま。
この平根発電所は落差33mを利用して水車を回して発電する、実に単純明快な方式。稼働したのは1954年(昭和29年)と古く、すでに57年間発電しつづけているアナログ時代の優れ物だ。当時の平根村長の先見も明によって建設したという。この辺りの経緯とこの小水力発電所の生み出す電力量、電力の使われ方などが毎日新聞7月14日地方版に載っている。とてもわかりやすくて良い記事だ。リンクを張ったが新聞記事なのでまもなく読めなくなるかもしれない。要点を記事から以下に抜粋してみる。
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「最大出力は550キロワット。2000年から平尾山公園のエスカレーターやレストラン、昆虫体験学習館、
冬のスキーガーデン「パラダ」の各施設の電力に活用」。
「市建設部によると、10年度の年間発電量は約270万キロワット時。公園全体の需要の98%を賄った
上に、余剰電力145万キロワット時を中部電力に売電し、約713万円の収入があった。
公園の全電力を購入した場合と比較して、約200万円の黒字」。
「現在、発電所は佐久浅間農協の所有。市が施設を借り、第三セクター・平尾山開発に事業委託」。
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常駐している管理人の方によると、夏場は平均300~400㌔ワットの発電実績とのこと。管理のやっかいな点は、落ち葉も水と共に水車に飛び込んでくるため、水路を定期的に清掃したり雑草刈りしたりする必要があるという。予想外に冬場に水量が減り、夏場の農業用水としての利用量が少ない時期に発電用の水量が安定し、安定して売電できるということのようだ。
一目で年代物の骨董品のようで、丸みを帯びたフォルムが美しい。石川島芝浦タービン株式会社と書かれた銘板が決まっている。
3・11以後は見学者が増えたようだ。発電の流れを写真とイラストで解説した説明書きがありがたい。
平根発電所は「電力の地産地消」の古くからの実例。小水力発電は日本列島に相応しい地域御用達の発電システムの一例ではないだろうか。
毎日新聞8月26日朝刊の記事に驚くべき試算が載っている。小水力発電が本格的に実用化されると、原発10基分の電力が供給可能だというのだ。【注:再生可能エネルギー固定価格買い取り法(再生エネ法)施行で売電価格が高くなることが、普及促進に欠かせない】
「経済産業省の調査によると、水力発電に適した一般河川は全国で約2700地点あり、大半が小水力発電向け。これらの河川全部に水力発電設備を設ければ、発電容量は計1200万キロワットに達し、原発10基分以上に相当するという」。
先人の水力の活用法、進んだ技術で水を効率的に利用すればできるのではないか。
実用例が不十分だが、長野県の取り組みが伺える県のホームページはこちら。
長野県内の 農業用水を利用した小水力発電施設
環境省の小水力発電普及促進のためのアクションプラン(注:政府の考え方の現状を知るには良いかも)
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コメント
山本宗補様のご活躍を陰ながら応援しています御代田町在住の後期高齢者です。
2016年11月24日の信毎に昭和55年当時の佐久農協の発電所記事が「刻」欄に載りました。そこで山本様の写真と「山本宗補の雑記帳」をfacebookで引用させていただきました。ご了解賜りたくお願い致します。
11/24朝は御代田町は20cmほども雪が積もったでしょうか。雪かきに一苦労しました。また「エコールみよた」で山本様の講演を聴講できる日を楽しみにしております。お元気でご活躍ください。
11/24/2016 藤井一夫拝
投稿: 藤井一夫 | 2016年11月24日 (木) 12:58