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2011年8月 9日 (火)

広島・長崎・福島  「原爆と原発は同義語である」

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米のスミソニアン博物館で撮影した修復されたB29戦略爆撃機「エノラ・ゲイ」。1997年撮影 テニアン島の基地で原爆を搭載し、広島に原爆を投下した。長崎に投下された原爆も同様にテニアン島から飛び立った。

8月9日は長崎に原爆が投下されて66年の追悼の日。
長崎市の田上富久市長はこの日恒例の長崎平和宣言を平和公園で読み上げた。
「たとえ長期間を要するとしても、より安全なエネルギーを基盤にする社会への転換を図るために、原子力にかわる再生可能エネルギーの開発を進めることが必要です」。明らかな脱原発宣言といえる。6日の広島市長よりも、原発事故をはるかに深刻かつ真摯に受け止めて熟考している。
田上市長は世界に2万発あるとされる核兵器についてもこう表現している。
「1か所の原発の事故による放射線が社会にこれほど大きな混乱をひきおこしている今、核兵器で人びとを攻撃することが、いかに非人道的なことか、私たちははっきりと理解できるはずです」。

また、菅首相のあいさつ文での脱原発表明は広島市でのものと変わらない。
「我が国のエネルギー政策についても、白紙からの見直しを進めています。私は、原子力については、これまでの安全確保に関する規制や体制の在り方について深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度を引き下げ、『原発に依存しない社会』を目指していきます」。

広島と長崎の原爆慰霊碑は、最近では2年前にインドから佐々井秀嶺師が44年ぶりに帰国された際の全国行脚で訪ねている。長崎の平和公園の片隅に建つ母子像がやけに記憶に残っている。一目見て、息絶えたような我が子を手に無限の悲しみに立ちつくすシンボリックな母親像に感じられたからだ。長崎県出身の彫刻家・富永直樹氏による長崎被爆50周年記念事業での作品だと解説がある。この日、長崎市内を案内してくれた知人の長崎新聞写真部の松嶋さんによると、物議をかもした作品のために、公園の隅に置かれたという経緯があると聞いた。
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_aaa6096平和公園の一角にある「原子爆弾無縁死没者追悼之標」

人類史上、広島に原爆が初めて投下された6日は、都内日比谷・銀座周辺では脱原発デモが実行され、2500人をこえる参加者があった。それまでの脱原発デモに違い、「広島・長崎・福島」を意識したスローガンも見受けられた。この日に脱原発デモが若い世代の参加者の呼びかけて実施されたことも、原爆と原発の放射能汚染を等しくとらえていることから選ばれたに相違ない。ただ、デモがどこで開催されようとも、警察の執拗な規制は異常なほとだ。動員される警察官の数には毎回驚くばかり。少しでも隊列を崩そうとすると警告し、デモが終わるまでには必ず誰かを「公務執行妨害」で逮捕しないと気がすまないという感じがする。
(おそらく、警察官も交代勤務で福島県の警戒区域周辺自治体での検問やパトロールに動員され、放射線量の高さを十分に知らされずに被曝している可能性は高いのだが)

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「原爆と原発は同意語である」と早くから言い切っているスゴイ人がいる。私が畏敬する「反骨の報道写真家」として著名な福島菊次郎さん(90歳)だ。山口県下松市の出身で、6日間の違いで九州の海岸で米軍上陸を想定した自爆訓練にあけくれている時に、原爆投下により広島市の原隊は全滅となって命拾いした。それよりも、戦後の福島さんは広島の被爆者を徹底的に撮影して写真集「ピカドン」 ある原爆被災者の記録」を1961年に出版している。70年代には、広島市内のABCC(日米合同の原爆傷害調査委員会のことで、「放射線影響研究所」の前身)をうまく騙して取材し、米人所長にインタビューしたり、カマボコ型の研究施設内で撮影している。福島さんが自衛隊広報課を欺き、自衛隊の軍事演習や兵器工場をことごとく撮影した後、全部月刊誌などで発表し、暴漢に襲われたり借家を不審火で失ったりしてもひるむことのない究極の生き方を貫いている人だ。

 62歳で瀬戸内海の離島と周防大島での自給自足の生活を開始してから出会った上関原発反対運動も、長年通って撮影している。そうした経緯から、福島さんが「原爆と原発は同義語である」という結論に至ったのは誰にも理解しやすいことだと思う。

ちなみに、これは宣伝になるが、私が編集長(交代制)を担当したオンラインマガジン「fotgazetフォトガゼット」第3号では、「時代の証言者たち」として、広島・長崎・水俣・福島を大特集した。広島は福島菊次郎さんの写真をお借りして15ページ組んだ。ABCCの写真も含まれている。発行は8月10日の予定だ。これは私もメンバーとして活動するフリーランスジャーナリスト10数名が独自に編集し発行する電子雑誌。年4回発行し年間購読料は2400円。詳細はfotgazetのWebでご覧ください。ぜひとも購読することでフリーランスの活動をサポートしていただきたい。


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